Irreplaceable Fragrance(かけがえのない薫り)

ある年の瀬の夜の寮の一室…
菜帆「美由紀ちゃん、できましたよー」
美由紀「菜帆ちゃん、こっちも準備できてるよー」
菜帆「それじゃあ今持っていきますねー」
菜帆が台所のIHコンロからコタツの卓上IHコンロへと鍋を持ってきた。
美由紀「スイッチオンっ!火はどれくらいにする?」
菜帆「そうですね〜、もう煮えてはいるから弱火でいいですよ」
美由紀「うんっ。うわあ、いい薫りだーっ」
菜帆「これも美由紀ちゃんのご家族が送ってくれる、美味しい食材のおかげですね」
美由紀「帰省したら言っておくね」
菜帆「お願いねー、では…」
二人『いただきまーす』
菜帆「じゃあ取りますねー。美由紀ちゃんは何から食べますかー?」
美由紀「今日の鍋って何だっけ?」
菜帆「えっと確か、野菜とお豆腐ともう処理しないといけない魚のつみれと…あとはカニもですー」
美由紀「それならつみれとお野菜から食べよっかな」
菜帆「はーい、どうぞ美由紀ちゃん」
美由紀「ありがとー。それじゃあ菜帆ちゃんの分はみゆきが取るねー」
菜帆「お願いしますね」
美由紀「つみれとカニとー、お野菜もー……」
 
美由紀「ふー、食べた食べたー。ごちそうさまー、お腹いっぱいだよー」
菜帆「おそまつさまでした。いっぱい食べましたねー」
美由紀「うんー、だって菜帆ちゃんの料理美味しいもん」
菜帆「フフフ、そう言ってもらえると嬉しいです」
美由紀「ねえねえ、片付け終わったらどうする?」
菜帆「んー、美由紀ちゃんはどうしたいですか?」
美由紀「あー…ねえねえ、宿題教えて欲しいけど…ダメかな?」
菜帆「それくらいならいいですよ、片付け終わったら一緒にやりましょう」
美由紀「やったー!うん、持ってくるね」
菜帆「その前にまずは片付けてからですからね」
美由紀「はーい」
 
菜帆「もう今年も終わりますね、美由紀ちゃん」
美由紀「そうだねー…あ、ここは何を書けばいいのかな?」
菜帆「ここですか?ここは確か…この辺のどこかにあったと思いますよー」
美由紀「あー、そうかも。ちょっと考えてみるね」
菜帆「美由紀ちゃんは明後日夕方の飛行機で帰るんですよね」
美由紀「そうだよっ。その代わりにお正月はちょっと早めに戻って来るよ」
菜帆「私はもう2つ番組収録をやって30日の日曜ですから羨ましいです」
美由紀「熊本までは新幹線?」
菜帆「そうですよー。飛行機も考えたんですけど取れなくってー」
美由紀「年末までお仕事なんだー」
菜帆「向こうでも2日にお仕事があるんです」
美由紀「凄いなあ、みゆきはゆっくり休んでくるけど高校生だと違うんだ」
菜帆「美穂ちゃんに、どうしても出て欲しいって頼まれちゃいましたからー」
美由紀「北海道だと帰省してもみーんな離れ離れになっちゃうし…」
菜帆「ゆっくり休んでくるのも大事ですから」
美由紀「そっかあ、うんっ。えーっとここは…これかな?」
菜帆「そうですねー。私も宿題を少し片付けましょうか」
 
美由紀「んあーっ!」
菜帆「フフッ、おっきなあくびですねー」
美由紀「もう疲れて眠くなってきちゃった」
菜帆「かなり根詰めて宿題やりましたから」
美由紀「やっとあと半分くらいかな」
菜帆「あとは明日にしましょうかー」
美由紀「そうだね、そうするっ」
菜帆「それじゃあ点呼もありませんし、お風呂入ってもう寝ちゃいましょう」
美由紀「うーん、お風呂で寝ちゃわないかなあ…」
菜帆「ちゃーんと起こしてあげます、美由紀ちゃん」
美由紀「お願いするね、菜帆ちゃん」
………
お風呂へと移動した二人。
美由紀「いつもよりちょっと人が少ないかな?」
菜帆「昨日のクリスマスイベントが今年最後のお仕事の人もいたみたいですし」
美由紀「ちっちゃい子がいつもより少ない気がするね」
菜帆「こうして美由紀ちゃんと過ごせるのも今年は今日明日で最後なんですね」
美由紀「寂しくなっちゃうよ…」
菜帆「でもずっとの別れじゃないですから…ね」
美由紀「それもそっかっ。ずっと一緒だもんっ」
菜帆「はいー。あ、美由紀ちゃんって明日は何かありますか?」
美由紀「みゆきは今日のとときらで今年のお仕事終わりだよっ」
菜帆「それなら明日の午後は一緒に家へのお土産買いに行きましょう」
美由紀「うんっ、そうしよっ。でも菜帆ちゃんは大丈夫なの?」
菜帆「明日は午前中にセクボンのレッスンだけですから大丈夫です」
美由紀「そうなんだ。じゃあ一緒に行こうね」
菜帆「お土産はどんなのがいいですかねー」
美由紀「うーん、お父さんもお母さんも海産物はよく食べちゃってるし…」
菜帆「やっぱりお菓子とかこっちでしか買えない物の方がいいですよねー」
………
美由紀「ふぁーあ…お風呂入ってきたら身体ポカポカで眠くなってきちゃった…」
菜帆「もう目が開いてないですね、美由紀ちゃん」
美由紀「うんー…もう寝ちゃおうよー菜帆ちゃん」
菜帆「えっ?」
美由紀「菜帆ちゃんはまだ寝ないの?」
菜帆「いえ、もう明日の準備をしたら寝ますけど」
美由紀「今日は寒いからー、一緒に寝たいなぁ…って思ってたもん…」
菜帆「…そうですねー…たまにはそんな日があっても…」
美由紀「菜帆ちゃんの身体、ギューってしてると気持ち良くていい薫りでよく眠れるんだー」
菜帆「そう言われると恥ずかしいですけれど…ありがとう美由紀ちゃん」
美由紀「早くギューってしたいなー」
菜帆「それなら先にベッドで待っててください。準備をしたらそっち行きますからー」
美由紀「はーい、おやすみー」
 
ススススス
美由紀のベッドへと滑り込む菜帆。もう美由紀は夢の世界へ旅立ったようだ。
菜帆「さっきは言わなかったですけど…」
美由紀「くー…菜帆…ちゃん…?…」
ぎゅっ
入ったとたんに美由紀の腕は自然と菜帆の身体へと抱き着いてきた。
菜帆「美由紀ちゃんの身体…抱き締めると温かくて、安心できる薫りで私も好きなんですよ」
美由紀「…んふふ…一緒に…ぐー…」
菜帆「フフフ、おやすみなさい美由紀ちゃん」
一つのベッドに二つの寝息、その薫りは温もりは心地よく二人を包んでいく…
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あとがき
飛神宮子です。
今月のLily枠3発目は、エビカニコンビこと「なほみゆ」。もう今年は最後まで1本/日で行く気です。
年の瀬ともなるとやっぱり忙しいものなんでしょうね。今までできなかった分をまとめてとかでしょうし。
ちょっとだけこの薫りが離れる、それだけでも普段一緒に居る二人には寂しさになっちゃう…一緒に過ごしている同士は総じてそうかもしれませんね。
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2018・12・26WED
飛神宮子
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