In the Light and Water(水と光の中で)

ある日の朋の部屋。
「芳乃ちゃん、今月の土日で何もない日ってある?」
芳乃「今月ですかー……わたくしは第3週の土曜日ならば今のところ空いておりますがー」
「それならアタシも大丈夫ね。一緒にお出かけしない?」
芳乃「お出かけですかー、どちらにでしょー?」
「水族館っ。また行きたくなったのよ」
芳乃「朋殿が先日のお仕事で行っておられましたかー」
「帰る時にその水族館と終わった後に行ったリゾートホテルの優待券を貰ったの。だからどうかなって」
芳乃「わたくしとでよろしいのでしてー?」
「もちろんよ。それでね………」
芳乃「なんとー、それは残念だったでしょうー」
「期限も来月いっぱいだし、それもあって近いうちにもう一度行きたいと思って」
芳乃「それならば、是非にお願いしたいのでしてー」
「じゃあ予約取らなくちゃだから、その時はよろしくね」
芳乃「はいー」
………
出発当日の17時頃…
コンコン
芳乃「朋殿ー、お待たせしましたー」
「芳乃ちゃん、入ってー」
ガチャッ バタンッ
芳乃「おじゃましますー」
「アタシも準備できたところなの、あの時の水着が見つからなくて」
芳乃「それならばわたくしが一緒になって探してもー」
「あっ……芳乃ちゃんの趣味のこと忘れてたわ…」
芳乃「しかし見つかったようで良かったですー」
「でもゴメンね、昼間は学校だったのに大変だったでしょ?」
芳乃「これくらいは大丈夫でしてー。準備は昨日までに終えてましたのでー」
「それくらい楽しみにしてくれてたんだ。何だか嬉しいわ」
芳乃「それは……朋殿と一緒に過ごせますからー」
「嬉しいこと言ってくれるわね……それで芳乃ちゃん、どうして今日は靴下が左右違うのかしら?」
芳乃「…!?!?こ、これは何かの間違いでしてー!(同じ色で違うデザインのでしてー!?)」
「芳乃ちゃん、もしかしてだけど今日の学校もそれで行ってた?」
芳乃「学校は色の指定もありますゆえ、それはないのですがー」
「それなら良かったわ。じゃあ芳乃ちゃんの部屋に行って履き直したら行きましょう」
芳乃「はいー。朋殿は準備は大丈夫でしょうかー?」
「大丈夫よ。財布にスマホに水着に着替えでしょ、優待券に衛生用品に髪関係に予備の袋もちゃんと入れて……あ、電源系のポーチが…これでよしっと」
芳乃「ならば行きましょー」
「ええ、行きましょう芳乃ちゃん」
二人は芳乃の部屋に寄ってから寮の玄関へと向かった。
 
場所は移って18時頃のリゾートホテル…
スタッフ「はい、本日から一泊で二名様ご予約の藤居様ですね。ではこちらの用紙に必要事項のご記入をお願いします」
二人はカウンターでチェックイン手続きを取っていた。
「これは宿泊する全員分ですか?」
スタッフ「そうなります。そちらのお連れ様も下の欄にご記入をお願いします」
「分かりました。このご時世だからいざという時に必要になるものね………はい、芳乃ちゃん」
芳乃「そうですなー、そこは仕方ないことでしてー……これでよろしいかとー」
スタッフ「はい、ありがとうございます。それでなのですが、本日お泊りのお部屋はお二人ですがダブルベッドのお部屋でよろしかったでしょうか」
「急だったからそのタイプの部屋しか空いてなかったし…。芳乃ちゃんはそれでも大丈夫?」
芳乃「わたくしは構いませぬー」
「それで大丈夫です」
スタッフ「では1階のXXX号室となります。こちらのリストバンドが部屋の電子鍵となっていますので、くれぐれも紛失や盗難されぬようお願いします」
「ありがとうございます。はい、芳乃ちゃん」
芳乃「ありがとうございますー」
スタッフ「チェックアウトは明日の午前11時半までとなっておりますのでよろしくお願いします。それではごゆっくりお過ごしください」
「分かりました。じゃ、行こっ」
芳乃「はいー、朋殿ー」
ぎゅっ
二人は荷物を持っていない手の方を繋ぎながら部屋へと向かった。
………
ピッ ガチャリ カチャッ
「この鍵、便利よねー。着けていれば持ち歩かなくても便利だし」
芳乃「そうですなー。身に着けていられるのは安全でありますゆえにー」
バタンッ ガチャッ カチッ
二人は泊まる部屋に入り電気を点けた。
「荷物はこのテーブルの上で良いわね。必要な物だけ持ったら夕食に行きましょ」
芳乃「持ち物はこのポーチだけで良いかとー」
「楽しみだったのよね。あの日は夕食食べてからホテルだったから朝食しか食べてないのよ」
芳乃「そうだったのですかー」
「女性には結構嬉しい食事って聞いてるから、期待して良いと思うわ」
芳乃「では参りましょうかー」
………
食事を終えて二人が今いるのは…
「ほらこっち、こっちで楽しみましょ」
芳乃「これがないとぷーるという物ですかー」
二人は更衣室で着替えて、ナイトプールのプールサイドへとやってきていた。
「あの日は平日だったから貸切だったけれど、さすがに休日前だとそうもいかないわね」
芳乃「まだ時期が早いですがー、それでもそれなりの人出があるのでしてー」
「ここ自体が温水プールだから、知っている人とかはちゃんと水着を持って来るってとこかしら」
芳乃「なるほどー、では入りましょうかー」
「そうね、このままだとさすがに肌寒いし」
チャポッ チャプンッ
プールに入った二人は借りてきた大きな浮き輪へと一緒に入った。
「狭くない?大丈夫芳乃ちゃん」
芳乃「大丈夫でしてー」
「このままゆったり浮かびながらお話しましょ(芳乃ちゃんの身体、温もりが伝わってくるわね…)」
芳乃「はいー(朋殿にくっついている場所が、温かくて気持ち良いのでしてー…)」
「それにしてもカップルとか女性のグループがやっぱり多いわねー」
芳乃「しかしそれゆえー、女性の方がほとんどで気兼ねなく居られますー」
「男性は従業員以外だと数えるほどかしら」
芳乃「この雰囲気は、女性とでないと難しいかとー」
「いかにも女性向けって感じね。この光の眩い感じとか」
夜の中で淡い色の照明がプールを包んでいた。
芳乃「これが幻想的でも、蠱惑的でもあるのでしてー」
「この雰囲気に中てられる人たちも多いって聞い……っ!」
芳乃「朋殿ーどうされま……っ!」
二人の視線の先には、カップルのキスシーンがあった。それも一組だけではなく何組も、集団だったり同性同士もあったりで…
「事務所でも見たことないってわけじゃないけれど…」
芳乃「あらためて見ると気恥ずかしくなってきましてー……」
「それだってこれだって、一つの愛のカタチ…なのかしら」
芳乃「きっとそうなのかとー……」
「………ねえ、芳乃ちゃん」
芳乃「……朋殿?」
「アタシ達も流されちゃう?」
芳乃「時には流れに身を任せることもー、良いのかもしれませぬー……」
夜空の下の水上、そうなるのが自然かのように二人の唇は近付いていく…
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あとがき
飛神宮子です。
乙倉ちゃん上位イベントに朋が出ていたので書きたくなって書いちゃいました。
あの時水着を持ってきていなくて悔しそうだったので、今度は芳乃と一緒に…でも雰囲気に抗えませんでしたね。
水族館デートは翌日という設定です。一日しか空きが無いなら近くで泊まって朝から楽しんだ方がと思いましたので。
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2022・05・15SUN
飛神宮子
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