1月2日の某アパート… |
ピンポーン♪ |
比奈 | 「…はぁーい…」 |
ガチャンっ ガチャっ |
比奈 | 「あー、春菜ちゃん明けましておめで…ええっ!?どうして今日こんなところにいるんスかっ!?」 |
春菜 | 「寒いのでとりあえず中に入れてください」 |
比奈 | 「あ、はい」 |
バタンッ ガチャンっ |
春菜 | 「はぁー…寒かったです…」 |
比奈 | 「は、春菜ちゃん、ど、どうしたんスか!?」 |
春菜 | 「もしかして、先月の話忘れてませんか?」 |
比奈 | 「先月の話っスか…?」 |
……… |
話は12月頭のアイドルルーム… |
比奈 | 「んんーっ!ああ、本格的にヤバいっス…」 |
春菜 | 「どうしたんですか比奈ちゃん」 |
比奈 | 「家の中がヤバいのに、原稿がまだ終わってないんスよ…」 |
春菜 | 「…いつものことじゃないですかーっ!」 |
比奈 | 「しかも事務所は周年パーティーで、メインは菜々さんっスよ…出ないわけにもいかないじゃないスか」 |
春菜 | 「確かにそうですね。比奈ちゃんとはユニット組まれてますし」 |
比奈 | 「ああ、アタシはどうしたらいいんスか…」 |
春菜 | 「…また私が片付けに行った方がいいですか?」 |
比奈 | 「あんまり春菜ちゃんの手は煩わせたく無いんスけど…お願いしたらしてくれるんスか?」 |
春菜 | 「いつになるかは分かりませんけど、まあそれくらいなら…」 |
……… |
時は1月2日へと戻り… |
比奈 | 「ああ!あの話、生きてたんスか?!」 |
春菜 | 「そのために帰省もそこそこで帰って来たんです」 |
比奈 | 「何か申し訳ないっスねえ…」 |
春菜 | 「それで春菜さん、今起きたんですか?」 |
比奈 | 「昨日はいつ起きてたかも覚えてないんすよねえ…半分ゾンビ状態でぶっ倒れてたっスから」 |
春菜 | 「今日の話をしてるんです」 |
比奈 | 「今日は朝に起きて、多少の戦利品とかを整理したくらいっスかねえ」 |
春菜 | 「もう…やりますよ、掃除も洗濯も」 |
比奈 | 「…いいんスか?せっかくの正月の時間なのに…」 |
春菜 | 「しなくちゃダメじゃないですか、この状態だともう…」 |
比奈 | 「面目ないっス…それなら頼むっスよ」 |
春菜 | 「とりあえず荷物は置かせてくださいね」 |
比奈 | 「あの、アタシのベッドの上に置いといてください…ってずいぶん多いっスね」 |
春菜 | 「帰省から戻ってきたところですし、お泊り用のセットも入れてきたんです」 |
比奈 | 「ああ、そうなんスか…」 |
春菜 | 「…手始めにベッドの上からやりますね。置くところないじゃないですか」 |
比奈 | 「…はい…」 |
|
比奈 | 「ところでここに何泊する予定なんスか?」 |
春菜 | 「本来は4日に寮に戻る予定だったので、2泊しますけど」 |
比奈 | 「ああ、やっぱりそうスか…」 |
春菜 | 「もちろん泊めてくれますよね?」 |
比奈 | 「それはどうぞ自由に使ってください。アタシが文句言える立場じゃないスから」 |
春菜 | 「フフフ、そこまで怒ったりとかはしてないですから」 |
比奈 | 「何だか怒りに打ち震えてるみたいだったっスよ」 |
春菜 | 「あれだけちゃんと掃除した部屋がああなっているのに、怒ったりなんかはしてませんよ…ええ…」 |
比奈 | 「やっぱり怒ってるじゃないスか!」 |
春菜 | 「何度言っても聞かない比奈ちゃんが悪いんですからね!」 |
比奈 | 「はい…」 |
春菜 | 「この量だと外に干すだけじゃ無理なので、コインランドリーでやってきた方がいいかもしれないですね」 |
比奈 | 「そうすか、この近くだと…歩いて15分くらい掛かるスよ」 |
春菜 | 「貯めこんだんですから、それくらいはしましょう」 |
比奈 | 「分かってるスよ…あ、それなら銭湯に行かないスか」 |
春菜 | 「近くにあるんですか?」 |
比奈 | 「近くどころか隣なんスよ。どうスか?春菜ちゃん」 |
春菜 | 「開いているならたまにはそういう所もいいかもしれないですね」 |
比奈 | 「じゃあそうしまスか。まずは今日の所はこの部屋と台所の制覇スかね」 |
春菜 | 「食事も摂りたいですし、そうしましょう。これはどこですか?」 |
比奈 | 「これはそっちの棚の2番目スよ。こっちはベッドの右下で…」 |
春菜 | 「これは洗濯物…また瓶や缶ばっかり…もう…」 |
比奈 | 「それ飲まないと乗り切れなかったんスよねえ…」 |
春菜 | 「栄養、ちゃんと摂ってました?」 |
比奈 | 「うーん…言われてみるとそうでも…」 |
春菜 | 「こういうのに頼り切るのは長くても1、2日くらいにした方がいいってトレーナーさんも言ってたじゃないですか」 |
比奈 | 「はい、春菜ちゃん…努力はするっス…」 |
春菜 | 「瓶・缶は後でまとめて洗って出しますからこの袋にあるだけ全部入れてください」 |
比奈 | 「了解っス………」 |
……… |
比奈 | 「こう足が伸ばせる風呂っていいっスねえ…」 |
春菜 | 「私は寮で入りますけど、それ以上に広くていいですねぇ…」 |
二人は約束通り銭湯へとやってきた。 |
比奈 | 「やっぱり若い子で来てるのはアタシ達くらいっスか」 |
春菜 | 「まだ学校とかもお休みですからね」 |
比奈 | 「たまに来る時も、そういないんスけどね」 |
春菜 | 「そうなんですか?」 |
比奈 | 「もっぱら大人の社交場って感じっスよ」 |
春菜 | 「でしょうね…」 |
比奈 | 「はあ…何だかキツかった時の毒素が抜けていく感じっス…」 |
春菜 | 「比奈ちゃんのサボり癖や怠け癖も抜けてくれたらいいですねえ…」 |
比奈 | 「それは無理な話っスよ…」 |
春菜 | 「ですよねぇ…私の眼鏡欲も抜けませんから」 |
比奈 | 「分かってるじゃないスか」 |
春菜 | 「やっぱりその年末のイベントは大変なんですか?」 |
比奈 | 「自分は描く方っスけど、買いに来る方も並んだりして大変スからねえ」 |
春菜 | 「私には分からない世界です」 |
比奈 | 「一生分からない方が倖せだと思うスよ」 |
春菜 | 「そういうものですか」 |
比奈 | 「そういうものなんスよ」 |
春菜 | 「でも何だかでもようやくいつもの比奈ちゃんが戻ってきた感じですね」 |
比奈 | 「そんなに違ってたっスか?」 |
春菜 | 「疲れててどよんとした感じが、お風呂に入るまで残ってました」 |
比奈 | 「ああ、きっとそうっスね。イベント明けで掃除までして疲労困憊だったっスから」 |
春菜 | 「今日はお疲れさまでした。明日も頑張りましょうね」 |
チュッ |
お風呂の中、誰にも見られていない隙をスキの気持ちに替えた春菜の唇が比奈の頬へとそっと乗っていく… |