Count Time(点呼の時間)

時は祝日前の22時半。寮ではこの時間に廊下へ出てくる寮生アイドルが何人かいる。
今井加奈、彼女もその一人である。ただ今日の彼女はもう一人連れていた…
加奈「美羽ちゃんも一緒に来る?」
美羽「うんっ、行ってみたいなー」
加奈「それなら行こう。それなら部屋の鍵も一旦閉めないと…」
ガチャっ バタンッ ガチャリ
加奈はタブレット端末を持って美羽と一緒に部屋を出た。
加奈「いつもこっちから順番に行くんだ」
コンコン
ゆかり『はいー』
ガチャっ
加奈「ゆかりちゃん、こんばんは」
ゆかり「加奈さんこんばんは、もうそんな時間でしたか」
加奈「うん。法子ちゃんもいるよね…ってあれ?今日は有香さんもいるんですか?」
ゆかり「はい、明日はお休みなので一緒にお出掛けすることになっていまして…それならばと」
加奈「気を付けてね、おやすみー」
ゆかり「はい…おやすみなさい加奈さん」
バタンッ
加奈「次は…」
コンコン
みちる『ふぁーい』
ガチャっ
加奈「みちるちゃん、こんばんはー」
みちる「はいー、ごくろうさまで…ふごふご…」
加奈「夜にそんな食べて太らないって羨ましいなあ」
みちる「そうですかねー、あれ?美羽ちゃんどうしたんですか?」
美羽「あ、明日早くから撮影があるんで、今日は加奈ちゃんの所に泊まることにしたんですっ」
みちる「おー、そうだったんですかー」
加奈「確認できたしOKだよ。みちるちゃんおやすみ」
みちる「おやすみなさいです」
バタンッ
加奈「次に行く前に入力っと。有香さんの名前も確認して…よし」
コンコン
日菜子『はい〜』
ガチャっ
加奈「日菜子ちゃんこんばんは」
日菜子「加奈さんこんばんは〜、由愛ちゃんもちゃんといますよ〜」
加奈「由愛ちゃんはもうお休み中かな?」
日菜子「明日のお休みにL.M.B.Gで練習を早くからするみたいですね〜」
加奈「なるほど、じゃあ早めに立ち去った方がいいねっ。おやすみ、日菜子ちゃん」
日菜子「おやすみなさい〜」
バタンッ
加奈「美羽ちゃん、次行くよ…あ、志保さんは今日は不在なんだっ」
美羽「この前のパフェのリポート、好評だったんだって」
加奈「理由が取材と番組撮影で外泊って、きっとそれの第二弾とかなのかな」
美羽「遠くなんだろうねー、いいなあ」
コンコン
『はい』
ガチャっ
加奈「肇ちゃんこん…あれ?あ、肇ちゃんも届け出してるって書いてあった」
「はいっちゃ。今度の撮影のために着物を取りに実家に帰ったと」
加奈「大変だなあ…葵ちゃんも一人で…大丈夫そうだね。何かあったら周りの人に助けてもらってね」
「ん、ありがと。それじゃ、おやすみっちゃ」
加奈「おやすみなさい、葵ちゃん」
バタンッ
美羽「各部屋回るって大変だねっ」
加奈「階長の役目だもん、仕方ないよー」
コンコン
詩織『はい…』
ガチャっ
加奈「こんばんは詩織さん」
詩織「加奈ちゃん、それに美羽ちゃんも…お疲れさま…」
加奈「詩織さんはこれからちょうどシャワーですか?」
詩織「事務所での打ち合わせが長引いて…」
加奈「分かりました。寒いんで気を付けてくださいね」
詩織「ええ…加奈ちゃんと…美羽ちゃん、おやすみなさい…」
加奈「おやすみなさいです」
加奈たちは向かいの部屋へと振り返った。
加奈「301は…今日はいるね」
バタンッ ガチャリ
詩織がドアを閉めると同時に加奈は301号室をノックした。
コンコン
瞳子『はい…』
ガチャっ
加奈「瞳子さんこんばんは」
瞳子「こんばんは、加奈ちゃん…に、美羽ちゃんも…?」
美羽「はい。明日早くから撮影なので…この部屋、水槽があるんだぁ」
瞳子「ええ…見ているだけで癒されるわよ。七海ちゃんも好きだって言ってくれて…」
加奈「あ、七海ちゃんも…いますよね?」
瞳子「あの子は寝るの早いもの。私がいると安心して点呼の前に寝ちゃうから」
加奈「分かりました、では失礼します。おやすみなさい、瞳子さん」
瞳子「ええ、二人もおやすみなさい」
バタンッ
美羽「寮って他にもペットとか飼っている人っているの?」
加奈「いるよー。雪美ちゃんとか小春ちゃんとかねっ」
コンコン
千鶴『はい』
ガチャっ
加奈「千鶴ちゃんこんばんは…あ、勉強中だったかな?」
千鶴「いえ、その…色々ありまして」
美羽「何か書いていた音がしてたよね。何かなー」
奥のほうを覗こうとする美羽。
千鶴「美羽ちゃん!?そ、それは…」
加奈「話は菜々さんに聞いてるよ。その…ファイトっだよ」
千鶴「う…は、はい。おやすみなさいっ!」
加奈「おやすみ、千鶴ちゃん」
バタンッ
加奈「…実は今日ね、菜々さんから連絡来てたんだ。寮で同じ階っていうのは教えてたからっ」
美羽「えっ、相手の人って誰なの…?」
加奈「ここの1階にいるよー。イベントで交流してからの仲だって」
美羽「そうなんだー…あれ、305は?」
加奈「ここは臨時で貸す部屋で今日は入ってないんだよ。あ、次から二部屋は誘惑に負けないでね」
美羽「へ?」
加奈「行けば分かるよー」
コンコン
響子『はーい』
ガチャっ
加奈「こんばんは響子ちゃん…うう、いい薫り…」
美羽「本当に美味しそうな薫りだねっ」
響子「あら?美羽ちゃんもなんですね。今日のうちに寝かせたい料理があって、さっき作り終わったんですよ」
加奈「ね、美羽ちゃん。分かったでしょ?」
美羽「うん…早めに退散しよ加奈ちゃん」
響子「また今度食べに来てくださいね、おやすみなさい」
加奈「はい、おやすみなさい響子ちゃん」
バタンッ
美羽「もしかして負けたことあるの?」
加奈「お腹がよっぽど空いてた時に何回かあったよ。太るからやめた方がいいって分かってたんだけどね…」
コンコン
愛梨『はぁい』
ガチャっ
加奈「こんばんは愛梨さん…う、この部屋は今日も甘い薫りで…」
愛梨「こんばんは〜、加奈ちゃんご苦労様です〜」
裕美「あれ?美羽ちゃんどうしたの?」
美羽「あ、裕美ちゃん。今日は加奈ちゃんの部屋に泊まるんだ」
愛梨「二人ともマロングラッセ食べますか〜」
加奈「え、遠慮しておきます!もう寝る時間ですし…ね、美羽ちゃん」
美羽「わ、私も明日の撮影に響いたら悪いですからっ」
愛梨「それなら廊下の冷蔵庫に置いておくので〜、好きな時に食べてください〜」
美羽「裕美ちゃん、凄いね…」
裕美「私はその、もうそういうスキル身に着けたから大丈夫だから」
美羽「凄いねー…」
加奈「それではおやすみなさい、愛梨さん、裕美ちゃん」
愛梨「おやすみです〜、加奈ちゃん、美羽ちゃん」
バタンッ
美羽「大変なんだね…これを毎日って凄いよー」
加奈「そうかな?慣れちゃったのもあるけど…」
パチッ
そう言いながら廊下の電気を消す加奈。
加奈「あとは入力して…送信して…これで終わりだよ。じゃあ部屋に入ろう」
美羽「うんっ」
ガチャリ ガチャっ バタンッ ガチャリ
二人は加奈の部屋に戻って鍵を下ろした。
加奈「うう…寒かったね」
美羽「毎日みんなの部屋回るって大変だね。電話とかじゃダメなの?」
加奈「ネットとか電話だと相手が見えてないからちゃんと本人か分かんないからっ」
美羽「そっかあ、誤魔化しちゃっても分かんないもんね」
加奈「だから面倒だけどこういう形になってるんだよ」
加奈はタブレットを自分の机の定位置へと置いた。
美羽「でもこれで今日のお仕事は終わりだよね?」
加奈「…うん」
美羽「…加奈ちゃん…ううん、加奈…もういいよね…」
コクン ボフンっ
一つだけ頷いた加奈はそのまま美羽をベッドへと押し倒した。
…ちゅっ…ぺちゅっ…ちゅくっ…ちゅぷっ…
部屋には二人の唇から発せられた音だけが響く…
加奈「ふうっ…でも明日朝からお仕事があるんだから、今日はこれだけだよ美羽」
美羽「…うん…でももうちょっとぉ…」
加奈「もう、美羽の甘えん坊さん」
美羽「加奈に甘えられるならそう言われてもいいもん」
加奈「あと一回だけだよ…んっ…」
美羽「んむっ…」
二人だけの空間に二人の唇から吐息の音だけが流れる…
加奈「……もう遅いし寝よっ…美羽」
美羽「…もっとぎゅってしてっ…加奈がしてくれなきゃ私寝ないよ…」
加奈「美羽のわがままさんっ」
ふぁさっ ぎゅうっ
加奈は布団と毛布を肩まで掛けてから布団の中で強く抱きしめた。
加奈「美羽の身体…温かいよ」
美羽「加奈のこと、芯から温めてあげるね」
加奈「今日の夜は寒くなるって言ってたから、美羽の温もりが嬉しいな」
美羽「それなら私にも加奈の温もりをもらえないかな?」
加奈「私ので良かったらいくらでも分けてあげるよ」
美羽「加奈…朝までいっぱい温まろうね」
加奈「うんっ…私の抱き枕になってね、美羽」
美羽「私だって…あれ?何かちょっぴり固い物が当たってるよ」
加奈「分かって言ってるよね。だって美羽のもそうなってるの分かるもんっ」
美羽「…ナイトブラってやっぱり付けた方がいいのかな?」
加奈「明日のCM撮影の時にメーカーの人に相談してみよう。商品がアレだもんね」
美羽「アレ…付けてみた?」
加奈「うん。サンプル貰って次の日だったかな。肌触りも良かったし、少し大人っぽさもあったね」
美羽「可愛いけどちょっとセクシーさもあって、普段でもちょっとオシャレにも使えそうだったっ」
加奈「今日は…着けて来なかったんだね」
美羽「だって明日着てくから朝に変えようって思ってたもん」
加奈「あ…私も明日のはもうそれ用に一回使って洗濯した後に、前からセットにしてたんだった」
美羽「あーでも、相談する時に気にした理由を聞かれちゃったらどうしよう…」
加奈「それは…周りの人でしてる人がいるから…でいいと思うけど…」
美羽「こんな状況になったからなんてとても言えないもんねっ」
加奈「そんなの言ったらそれこそスキャンダルになっちゃうよ」
美羽「アハハ、そうだねっ…あ、そうだ。前から気になってたんだけど、こう騒いでて音とか大丈夫なの?」
加奈「隣もそんなに壁は薄くないし、上下は聞こえるけど…この下の211はアナスタシアちゃんだから」
美羽「そうだったんだ…じゃあ泊まってる時にたまに下から聞こえてるのってもしかして…」
加奈「そういうことだよ…。美波さんも同じ階だから、寂しい時はその…一人でもって…」
美羽「じゃあその下の1階は?」
加奈「107は点呼のときに言ってた千鶴ちゃんのお相手の人だよ」
美羽「うーん、まだこの寮のことは知らないことがたくさんあるなぁ」
加奈「これでもまだほんの一部で、他の館にももちろんいるって聞くよっ。同室の人や同じ階の人は多いんだって」
美羽「事務所でも色んなところから聞こえてくるもんね」
加奈「私たちもその一つなんだから…」
チュッ
加奈「ね、美羽」
美羽「加奈…そうだね」
加奈「それじゃあ本当にそろそろ寝よっ。明日も早いもん」
美羽「うん…おやすみ、加奈ちゃん」
加奈「おやすみ、美羽ちゃん」
Pi♪
いつものモードに戻った二人は、朝まで一つの布団の中で仲までも温めあっていたのであった…
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あとがき
飛神宮子です。
今月の百合百合枠が一本とは言ってませんし。久々に最初に書いたっきりだった「みうかな」です。
寮の様子も併せて書いたので百合部分は控えめで。
どこのCMかですか?下着メーカーだったようですよ。
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2016・11・27SUN
飛神宮子
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