4月10日、月曜日の朝… |
春菜 | 「起きてください、比奈ちゃん!」 |
比奈 | 「ん、んんー…?何すか、春菜ちゃん…」 |
春菜 | 「もう朝なんです!だから早く起きてください!」 |
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時は昨日の夕方へと遡る… |
比奈 | 「おじゃまするっスよー」 |
春菜 | 「どうぞ、比奈ちゃん」 |
千枝 | 「あ、こんにちは比奈さん」 |
比奈 | 「あー、そういえば千枝ちゃんと一緒に住んでたんスね」 |
春菜 | 「はい。あ、荷物は私の部屋の方に置いておいてください」 |
千枝 | 「比奈さんは今日は泊まるんですよね?」 |
比奈 | 「そうっスよ」 |
春菜 | 「千枝ちゃん、隣の部屋がもしかしたら少し五月蝿くなっちゃうかもしれないですけど…」 |
千枝 | 「はい…その…はい…」 |
春菜 | 「あ、あの千枝ちゃん?そ、そんなヘンな意味で言ったわけじゃないですよ…ねえ、比奈ちゃん」 |
比奈 | 「あれ?千枝ちゃんって意外とおマセさんっスか」 |
千枝 | 「えっ!ご、ゴメンなさい。千枝…てっきりそんな話なのかなって」 |
比奈 | 「春菜ちゃん、千枝ちゃんにどんな指導してるんスか?」 |
春菜 | 「あのですね…実は私もそこまで詳しいことは知らないんですけど…」 |
比奈 | 「なんスか?」 |
春菜 | 「上と斜め向かいはそれぞれ部屋の住人同士でイチャイチャする間柄とかでして…」 |
千枝 | 「千枝もドアが開いてた時に何回か見ちゃって…」 |
春菜 | 「それとお向かいさんと談話スペース挟んで隣の子もそういう関係みたいです」 |
比奈 | 「なるほど…囲まれてるっスね」 |
春菜 | 「寮でも周知のみくちゃん達ほどじゃないんですけどね」 |
比奈 | 「あー…」 |
千枝 | 「その…春菜さんと比奈さんは…?」 |
比奈 | 「あれ?アタシ達の関係って千枝ちゃんには話してないっスか?」 |
春菜 | 「あれ?千枝ちゃんには話してなかったでしたっけ?」 |
千枝 | 「千枝、知らないです。春菜さんがたまに比奈さんの家に行くっていうのは知ってますけど…」 |
比奈 | 「春菜ちゃん、どうしてこういう大事なことを言っておかないっスか…」 |
春菜 | 「言ったつもりでして…」 |
千枝 | 「じゃあ春菜さんと比奈さんって…やっぱり大人のお付き合いしているんですか?」 |
比奈 | 「あー、きっとおマセな千枝ちゃんの思ってるほどじゃないっスよ!」 |
春菜 | 「その…何だか眼鏡が無い時くらい恥ずかしいんですけど…」 |
千枝 | 「ゴメンなさいっ、千枝…なんだか悪い子ですね」 |
比奈 | 「しばらくしたら元に戻るから大丈夫っス。まあそこで茹蛸みたいになっている春菜ちゃんはそのまま放っておくっスよ」 |
千枝 | 「はい…」 |
比奈 | 「あ、そういえば明日は千枝ちゃんも学校っスよね?」 |
千枝 | 「はいっ。比奈さんは明日はどうするんですか?」 |
比奈 | 「明日は春菜ちゃんが出る時間に一緒に出て、事務所寄ってレッスンしてから帰るっスよ」 |
千枝 | 「新曲ですよね。また千枝、憶えるの遅れちゃう…」 |
比奈 | 「今回のは別件のユニットの方っスから、千枝ちゃんが心配する必要無いっスよ」 |
千枝 | 「そうなんですか?よかったぁ…」 |
春菜 | 「新曲は明後日の夜のレッスンからですよ、千枝ちゃん」 |
比奈 | 「ようやく復活したっスね」 |
千枝 | 「あっ、春菜さん。千枝、春菜さん達が居ない間に愛梨さんから荷物を預かりました」 |
千枝は流し台に置いてある荷物を取りに行った。 |
春菜 | 「フフフ、頼んでいたアレですね」 |
比奈 | 「何スか?」 |
千枝 | 「はいっ、春菜さん」 |
春菜 | 「…っとと、ありがとう千枝ちゃん」 |
比奈 | 「愛梨ちゃんってことはお菓子絡みっスね」 |
春菜 | 「今日の夕食はこれを三人で食べてお祝いしようかなって思ったんですっ」 |
箱を開けた中に入っていたのは… |
比奈 | 「粉と…卵と…色々と…作り方の紙っスね」 |
春菜 | 「はい!千枝ちゃんも今日は夕食頼んでないですよね?」 |
千枝 | 「はい、よく分からなかったけど春菜さんにいらないって言われて…」 |
春菜 | 「今日はこのホットケーキで比奈ちゃんと私の誕生日祝いにしようって決めてたんですっ!」 |
……… |
夕食のホットケーキパーティも終わり、なんやかんややってここは春菜の個人スペース… |
比奈 | 「広いお風呂っていいっスねぇ、春菜ちゃん達が羨ましいっスよ」 |
春菜 | 「私もここに来た当時はそう思っていましたけどね」 |
比奈 | 「寮生活ってどういう感じなんスか?」 |
春菜 | 「多少は時間に縛られますけど、仲間と一緒ですから楽しいですよ」 |
比奈 | 「ほうほう」 |
春菜 | 「本当の家族とは離れての暮らしですけど、大家族みたいですし」 |
比奈 | 「アタシはそういうの経験が無かったっスからね」 |
春菜 | 「比奈ちゃん、今は一人暮らしじゃないですか」 |
比奈 | 「実家だとどうしても生活リズムが合わなかったんスよね」 |
春菜 | 「だからってそれが部屋が汚くなる理由にはなりませんからね」 |
比奈 | 「いや、本当に面目なかったっス。あれからはまあ綺麗に使ってるっスよ」 |
春菜 | 「本当に比奈ちゃんは困った人です」 |
比奈 | 「こんな可愛い子の困り顔だったらいくらでも見たいっスよ?」 |
春菜 | 「もう…そうやってまた私のこと困らせて…」 |
比奈 | 「でも可愛い子ってのは…」 |
チュッ |
比奈はベッドで隣に腰掛けていた春菜の頬へとそっと口付けた。 |
比奈 | 「事実っスよ」 |
春菜 | 「比奈ちゃん…」 |
そこに… |
コンコン |
春菜 | 「あっ…もうこんな時間でした。はーい」 |
春菜は部屋のドアへと駆け寄った。 |
ガチャっ |
穂乃香 | 「こんばんは、春菜さん。今日は…比奈さんもご一緒ですね?」 |
春菜 | 「あ、はい。そこにいますよ」 |
比奈 | 「おじゃましてるっスー、えっと…穂乃香ちゃん?」 |
穂乃香 | 「はい。この階の階長ですので点呼に回ってますー。あの、千枝ちゃんはもう寝てますね?」 |
比奈 | 「お疲れさまっスー」 |
春菜 | 「はい。9時半くらいには寝たみたいです」 |
穂乃香 | 「では失礼しました、おやすみなさい春菜さん、比奈さん」 |
春菜 | 「おやすみなさい、穂乃香ちゃん」 |
バタンッ |
そのまま個人スペースへと戻ってきた春菜。 |
春菜 | 「どうします比奈ちゃん、もう寝ちゃいます?」 |
比奈 | 「そうっスね、春菜ちゃんも明日は高校っスよね?」 |
春菜 | 「はい、行ってきます」 |
比奈 | 「それなら寝た方がいいっスね」 |
春菜 | 「じゃあ今日はもうお休みしましょう」 |
電気を消してベッドの布団へと入る二人。 |
比奈 | 「おやすみなさい、春菜ちゃん」 |
春菜 | 「あ、ちょっと待ってください」 |
比奈 | 「何スか?」 |
春菜 | 「その…あらためて誕生日おめでとうございます…」 |
チュッ |
ベッドの中で向かいあう顔と顔、春菜の唇は自然と比奈の唇へと重なっていた |
比奈 | 「春菜ちゃん…ありがとうっス」 |
春菜 | 「お、おやすみなさいっ!比奈ちゃん」 |
比奈 | 「そんな恥ずかしくなるなら、しなきゃ良かったのに…おやすみ、春菜ちゃん」 |
互いの鼓動を感じながら、その夜は更けていった… |
……… |
翌朝… |
春菜 | 「起きてください、比奈ちゃん!」 |
比奈 | 「ん、んんー…?何すか、春菜ちゃん…」 |
春菜 | 「もう朝です!だから早く!」 |
比奈 | 「ああ…そうっスか…」 |
一緒のベッドの中、軽く伸びをした比奈。 |
春菜 | 「おはようございます、比奈ちゃん」 |
比奈 | 「…んん…おはようっス、春菜ちゃん」 |
比奈の目の前には愛しの笑顔の…それも特別な日…そうとなれば… |
チュッ |
比奈の唇はそのまま春菜の唇を捕らえていた。 |
春菜 | 「えっ…」 |
比奈 | 「誕生日…おめでとっス。一番最初に言いたかったっスよ」 |
春菜 | 「え…う…あ、あの…は、春菜さん……っ」 |
ぎゅっ |
比奈の身体は春菜の気持ちが静まるまで、そのままホールドされ続けるのであった… |