Key to be in me(私でいるための鍵)

年始のとあるファッションビル…
美嘉「はい、今日は初売りが始まる前の渋谷にある○○にお邪魔してます★」
「ビルの中は割と静かだけれど、外は…」
カメラは外の光景を映し出した。
「開店を待っている女性の長蛇の列になってるわ」
美嘉「今や遅しと待ってるみたいだね」
「まだあと1時間以上あるのよね」
美嘉「これがオシャレを求める女の子たちのエネルギーなのかもっ★」
「それではこちらに入っているお店の中からいくつか紹介するわ」
美嘉「アタシ達が注目してたりおススメしたい店舗を中心にね」
「それではまず、こちらの×××から…店長の△△さんよ」
美嘉「おはようございます、△△さん」
店長「おはようございます、ようこそ×××へ」
「こちらはどういうお店なのかしら」
店長「私たちのお店はハイティーン層を中心としたアパレルやアクセサリーを主に取り扱っております」
美嘉「ちょうどアタシ達くらいってカンジかな★」
「そうね、フレデリカとかに似合いそうな服よね」
店長「今年の福袋は8千円の少しお求めやすい物から、1万5千円、2万円と3種類ご用意いたしました」
美嘉「中身のコンセプトみたいなのは前に飾ってあるから、それを参考にするといいかも★」
店長「皆様のお越しをお待ちしています」
「ありがとうございました、×××でした。では次の注目のお店に行きましょう美嘉」
美嘉「そうだね奏」
………
プロデューサーが運転するワゴンの中…
「ふう…結構疲れたわね美嘉」
美嘉「そう?アタシはそこまででもないけど★」
「この中継の仕事、まさか私たちに回ってくるとは思わなかったわ」
美嘉「年末の仕事が終わって急にだったからね」
「周子も志希もまさかのフレデリカまで帰省が決まった後に言われるなんて…」
美嘉「岩手に京都にフランスだもんね、だからみんなこのお仕事は絶対に無理だけど」
「私たちが関東で良かったわね、プロデューサー」
「スマンな本当に二人とも。ちひろさんから連絡が来てやっと思い出したくらいこっちも忙殺されててさ」
美嘉「アタシは家にいるよりもいいけど」
「あら、家に帰りたくない事情でもあるのかしら?」
美嘉「家にいると莉嘉がかまって欲しがってちょっとね…」
「大変ね美嘉も」
「あ、そうだ。後ろに積んであるの、もしだったら欲しいの貰っていってくれ」
「…これって福袋?」
「ああ。ビル内のショップからいくつか好意でいただいた物だから」
美嘉「そんな、こっちはお仕事なんだから別にいらないのに」
「それはそれだ。それに本当は二人とも今日は買い物にこういう所来る予定だったんじゃないの?」
美嘉「アタシ、莉嘉にそれもせがまれててさー。今年はお仕事だから助かったんだよね」
「結局どうしたの?」
美嘉「学校の友達と、その親と一緒に行くって言ってた」
「そうなの、買えるといいわね」
美嘉「たまにはアタシの手を借りないでやりなさいってね」
「それでプロデューサー、これのサイズは?」
「だいたいみんなに合うくらいのをもらったはずだけど」
美嘉「アタシ達含めてLiPPSって、みーんな同じくらいだもんね★」
「ええ、本当にやり易いユニットよね」
美嘉「性格面を除けば…ね」
「…本当に美嘉には助けられてるわよ」
美嘉「LiPPSの時だけは奏までそっち行っちゃうんだもん、アタシまでボケに回ったらユニット崩壊するし…」
「普段そういうユニットばかりさせられているのだから仕方ないのよ」
美嘉「この事務所ってどうしてか分かんないけど、引っ掻き回し役が多すぎだと思うよ…」
「お互い苦労してるわね…」
美嘉「うん…ま、そんなこと今さら言っても仕方ないけどね★」
「ええ、そうね」
美嘉「それでプロデューサー、これどれ貰って行ってもいいの?」
「いいぞ。いくつある?」
「7つもあるわ、どうするの?」
「それなら美嘉と奏は2つずつな。それと美嘉は別にこの助手席のを持って帰ってくれないか」
美嘉「それは?」
「ローティーン用の店のなんだ。せっかく中継に来てもらってたから妹さんにって」
「あら、良かったじゃない。これで株が上がるわよ」
美嘉「…莉嘉欲しがってた一つがここのだったの…ありがと、プロデューサー」
「お礼は俺にじゃなくてお店にだけどな。それで美嘉も奏の家でいいのか?」
美嘉「うん。どうせ家に帰っても莉嘉いないはずだし、東京に来たついででいーじゃんってことで★」
「いいけど、何もお構いできないわよ」
美嘉「あと、それなら貰ったの開けちゃおうかなって」
「あら、うちのこと都合よく使うのね」
美嘉「そうじゃないけど、でもお仕事決まった時から行くことにしてたのはホントだし」
「そうね、あとどれくらいで着きそう?」
「そうだな…長くて30分だろうな」
「寄り道してもらってもいいかしら」
「いいけど、どこだ?」
「家の近くなんだけど、住所を言うからどこかに止まってもらえると助かるわ」
「ん、了解」
………
美嘉「奏の家、久しぶりだね」
「前は4人で押し掛けてきて、あれは大変だったのよ」
美嘉「アタシは止めたんだけど、あとの3人が偵察に行くってきかなくて…」
「ホント、勝てないわよね」
美嘉「お互いね★」
「ねえ、開けてみましょうか」
美嘉「うん、せっかくもらった物だし開けちゃおう」
「お互いに要らなかったら融通し合いましょうね」
 
「お互いに似合わないのはこの一着だけね」
美嘉「これはどっちかって言えば志希かフレデリカかな」
「ええ、ここまで言い方悪いけれどぶっ飛んだものは、私たちには無理ね」
美嘉「…でもこの袋は、プロデューサーもよく貰ってきたね…」
「ブランド名か店の名前しか聞かなかったんじゃない」
美嘉「アタシ達はこれがこの下着のお店だってよく知ってるけど」
「場合によってはセクハラ物よね…今度報告して恥ずかしがらせちゃおうかしら」
美嘉「そうした方がいいかもね」
「それで美嘉はその3組で良かった?」
美嘉「いいよ。奏だってこういうのは何着あっても困らないでしょ」
「そうね、美嘉とお揃いってことになっちゃうけど」
美嘉「あの3人とお揃いになるよりは奏の方がいいから」
「あら光栄ね。お礼はキスで…いいかしら?」
美嘉「したいならどーぞ」
「どうしたの、普段はあんなにガード固くしてるのに」
美嘉「そんなにキスキス言ってたら警戒もするでしょ。でも正月くらいならまだいいなって思ったの★」
「フフ、美嘉ったら変なところで固い女なんだから」
チュッ
美嘉「んっ…どーせアタシはそういう人ですよーだ」
チュッ
「んんっ…美嘉からしてくれるなんて…嬉しい…」
美嘉「たまにしてあげないと奏が拗ねちゃうし」
「私のこと本当は嫌いなの、私にはもう向いてくれないのって思ってしまうもの」
美嘉「そんなこと…」
ぎゅうっ
美嘉「ないから心配しないで奏」
「美嘉…」
美嘉「だって、奏の弱さまでちゃんと見てるから…ね」
「ありがと…美嘉がいるから私は私でいられるの…きっと」
『貴女のために』…言葉にしなくても二人は心だけでその想いを通わせていく…
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あとがき
飛神宮子です。
今月のLily枠2発目、昨年のあつきよに続いて初登場の奏美嘉です。
以前周子・美嘉・日菜子のSSでこの組については語っていましたが本格的な登場という形で。
奏も一人の女の子、弱い所をさらけ出せるのは自分を分かってくれる人の前でだけかなって思います。
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2019・01・02WED
飛神宮子
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