Carrot is After the Assignment(ご褒美は課題の後で…)

8月第4火曜日のとあるラジオ局…
♪〜
千夏「レッドバラードのRED NIGHT BALLAD。火曜日は私、相川千夏がお送りします」
オープニングの音楽が少し落ち着いたところで、ラジオのパーソナリティが話し始めた。
千夏「今日は久しぶりに放送日の録って出しよ。いつもよりタイムラグは少ないわね」
ブースの中には千夏…ともう一人いるようだ。
千夏「本人が少しそわそわしているようなので、今週のゲストを紹介するわ。登場は何ヶ月ぶりだったかしら…」
「はいはーい、えっと確か…5月の頭じゃなかったっ?」
千夏「あら、もう3ヶ月以上…あのグラビアの宣伝の時に来てもらったのよね。はい、ゲストは大槻唯ちゃんです」
「どもどもー、リスナーのみんなお久し振りー」
千夏「今日はまだ夏休みよね」
「そうだけど、ライブとかあって休んだ気がしなかったなー」
千夏「そうね。この夏は大変だったでしょ?」
「でも楽しかったよ。あのね、それでゆいからお願いがあるんだけどー」
千夏「何かしら?唯ちゃん」
「そのー…宿題がー…」
千夏「ハイハイ、そんなことだろうとは思ってたわ。この収録の後ね」
「ありがとー、やっぱりちなったんは優しいねっ」
千夏「でもまずは自分の力でやりなさい」
「はーい」
千夏「ではまずは一曲お聴きください…そうね唯ちゃん、自分で曲紹介する?」
「え、唯がやっちゃっていいの?」
千夏「いいわよ」
「じゃーリスナーのみんな聴いてね。大槻唯で『Radio Happy』をどうぞー」
♪〜
………
曲とCMが開けて…
千夏「それで唯ちゃん、今日来てもらったのは他でもないのよ」
「え、なになにー?」
千夏「この番組にも唯ちゃんに関する質問を結構貰っているの。それに答えて欲しいのよ」
「オッケーっ」
千夏「この番組へのお便りやご感想、ご意見やご質問などは番組サイトのフォームから随時受け付けているわよ」
「お便りお待ちしてるよー。それでどんな質問が来てるの?」
千夏「まずはこちらね。『千夏さんこんばんは。さっそくですが質問があります。唯さんはどれくらい千夏さんに懐いているのですか』だそうよ」
「えー、どうかな?ゆい、やっぱり懐いてる感じする?」
千夏「見た限りでは私の傍に居る時が一番落ち着いているわよね」
「そうかもね。やっぱりちなったんの傍だと心落ち着くんだよねー」
千夏「他の子達とは、割と騒いでいても特に二人になるとそうなるわ」
「恥ずいのもあるんだけど、ゆいのこと一番知っててくれてるから言わなくても分かってくれるっていうかー」
千夏「ええ…そうね」
「というわけでそういうことっ、分かってくれたかなー?」
千夏「お便りありがとうございました。では次のお便りは唯ちゃんに読んでもらおうかしら」
「はいはーい、じゃあ読むよー。『千夏さんこんばんは。千夏さんは唯さんのここが好きとかここを直して欲しいとかありますか』だってー」
千夏「ここを直して欲しい…特には無いのよね」
「えっ、そう?」
千夏「直して欲しいって不満は無いのよ。今の唯ちゃんが私にとっては一番だもの」
「あ、ありがとっ…そうマジマジと言われるとドキっとしたー」
千夏「でも強いて言うなら、分かってる予定はちゃんと伝えて欲しいわね」
「それは確かにそうだった、ゴメンちゃい」
千夏「急に私の家に来たいって言われても、こっちも準備があるんだから」
「だってー、急に行きたいって思う時だってあるもん」
千夏「それはいいのよ。予定が分かっているなら伝えてってこと」
「はーい」
千夏「それで好きなところ?それは…ここのリスナーさんなら分かってるわよね」
「そうなの?」
千夏「事務所のこぼれ話の週は大体が唯ちゃんの話をしてるもの。そういうことなのよ」
「ゆいもちなったんのことは全部が好きだからね。あっ、でもアレだけはちょっとねー」
千夏「アレ?」
「読書に集中しすぎてゆいの話を流し聞きするのはやめてほしいなーって」
千夏「それでもちゃんと耳には入ってるわ。でも分かってるわよ」
「エヘヘ、そう言ってくれると嬉しいなー」
千夏「お喋りしてあげるときはちゃんとするから」
「うんっ、お願いねっ」
千夏「ではもう一通いきましょう。『千夏さんこんばんは………」
………
番組収録が終わり、打ち合わせを終えてここは千夏のマンション…
千夏「さて…いつまで泊まる気かしら?」
「この宿題が終わるまでかー、遅くても木曜日までっ。金曜から学校だもん」
千夏「それで課題はどれくらいなの?」
「えっと…今出すね」
唯はテーブルの上にプリントの束を取り出した。
「これだけっ。体育とかの実技はあるけどそっちはもう大丈夫だからっ」
千夏「読書感想文とかレポートは?」
「それは少なくしてもらったから何とか終わらせてきたっ」
千夏「1、2、3…、それでこの80枚近くが手付かずということね」
「ちなったん、お願いー」
千夏「まずは自分の力だけでやりなさい。特に社会科や理科は教科書をちゃんと見れば分かるはずよ」
「分かったー、何とかやってみる…」
 
約二時間後…
「ちなったーん、ギブ…」
バタリ
ついに机に突っ伏した唯。
千夏「それならこうしましょう。あと何枚?」
「あとねー…60枚くらいかな…」
千夏「それを1枚ずつ片付けなさい。1枚やるごとに…後は分かるわね?」
「ちなったん…」
千夏「一度スッキリさせることも大切なのよ。軽めのをシてあげるから」
「うんっ」
千夏「但し、30分でプリント1枚が終わらなかったら…その回数で後で大変なことになるから覚悟しなさい」
「う、うん…」
千夏「そうね、5回ごとにグレードを上げるつもりだから頑張って」
「でもそれだとゆいが得しないけどー」
千夏「逆に全部ちゃんとできたら凄いの一緒に…シ合いましょう」
「す、凄いの?」
千夏「ええ。唯ちゃんも…ここに来たって事はそれを望んでいたんでしょう?」
「……ちなったん優しいよ。ゆいのワガママを受け止めてくれて」
千夏「それは…唯ちゃんだからよ。ほら早く、まずは短いけれど夕食までの時間…」
チュッ
隣に座ってた千夏は唯の頬へとそっとキスをした。
千夏「頑張りなさいね」
「エヘヘ、はーい…」
千夏「(唯ちゃん、私に聞いちゃダメとは言ってないこと分かってるわよね…?)」
「(どんなことしてでも…終わらせちゃえばいいんでしょ…?)」
その後が濃厚だったかどうかですか?それは二人のツヤツヤした顔が物語っていることでしょう…
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あとがき
飛神宮子です。
今月の百合百合枠3本目は、久しぶりのゆいちなです。
千夏も何だかんだ唯には甘いと思います。唯をどうその気にさせるかと考えた結果がアレなのでしょう。
その千夏は誰に吹き込まれたかですか?お酒飲める妖艶な方々が色々いますからねえ…きっとそっちからでしょう。
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2017・08・31THU
飛神宮子
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