木村夏樹(26・結婚済):ミュージシャン/安部菜々(年齢非公表・結婚済):声優 |
|
|
|
ある日の収録スタジオ… |
夏樹 | 「んー…」 |
とある女性が作曲者や他のスタジオミュージシャンと楽譜を見ながら悩んでいた。 |
夏樹 | 「何か足りないんだよなあ…こう一つ、何だろう」 |
楽器担当 | 『俺は木村さんの歌声、好きだけどなあ』 |
夏樹 | 「それはそれなんだけど、今回の曲ってちょっと違うかなって」 |
楽器担当 | 『あー、狙いがいつもと違う層だしな』 |
夏樹 | 「アタシみたいなロック系の歌手がアニメソングをやるなんて思っても無かったしさ」 |
作曲者 | 『悩むね…コーラスをもうちょっと足してみるかな』 |
夏樹 | 「え?○○さん、良いんですか?」 |
作曲者 | 『そうすればもう少しアニメソングらしくできるかなと思うけどね』 |
夏樹 | 「すみません、お願いします」 |
作曲者 | 『木村さん、明日か明後日は大丈夫?』 |
夏樹 | 「あー…明日だとちょっと人と会うんで、時間によるんですが」 |
作曲者 | 『それなら明後日に改めて収録でどうかな。納入までまだ余裕は充分だし』 |
夏樹 | 「分かりました。たぶん大丈夫だと思いますけど確認後に改めて連絡でいいですか?」 |
作曲者 | 『それでいいよ。でもそうなるとあと一人か二人…△△さん、用意できない?』 |
スタッフ | 『まあちょっと知り合いあたって聞いてみますわ』 |
夏樹 | 「何だかお手数おかけしてすみません」 |
作曲者 | 『いや、いいんだよ。そこは良い物を作りたいじゃない』 |
夏樹 | 「はい、やるからには満足できた方が良いですし」 |
作曲者 | 『よし、じゃあ今日はこれで解散しよう』 |
夏樹 | 「ありがとうございました。また明後日よろしくお願いします」 |
作曲者 | 『うん、明後日な、木村さん』 |
|
トントンッ |
スタジオを出た夏樹は持っていたスマホである人へ連絡を取り始めた。 |
夏樹 | 「もしもーし」 |
P | 『もしもし、夏樹か。終わったのか?』 |
夏樹 | 「今日は満足いかなくて明後日に流れた」 |
P | 『そうか…そっちに就いてられなくてスマンな』 |
夏樹 | 「いや、アンタも忙しいだろう。新しい子も入ってるし、アタシも無理言って他部署なのにプロデューサー続けてもらってるんだし」 |
P | 『一番夏樹のことを分かってるつもりだから、それは言いっこなしだ…ってまたか…』 |
夏樹 | 「ハハッ、その声はだりーとみくと一緒か?」 |
P | 『新人の子も見学してるっていうのにこの有様だ、ハハハ…』 |
夏樹 | 「それがだりー達の通常運転だからなあ…」 |
P | 『それでどうするんだ?迎えに行った方がいいのか?』 |
夏樹 | 「いや、いいや。こっちはバイクなんだしさ」 |
P | 『了解。ま、それに夏樹も家庭があるしな』 |
夏樹はミュージシャンに転身後、24歳で音楽関係者と交際の末に結婚した。 |
P | 『それで明日は一日オフで良かったよな』 |
夏樹 | 「明日なら会えるって話でさ」 |
P | 『俺からもよろしく頼むよ。産休してたから俺からもしばらく電話でしか連絡取れてなかったしさ』 |
夏樹 | 「ああ、了解。そこの二人からは…いいか」 |
みく | 『あれー?Pチャン誰と電話してるのー?』 |
P | 『みくか?ああ、夏樹とだけど』 |
李衣菜 | 『え?なつきちとだったの!?』 |
P | 『もう用件終わったから切るけどな』 |
夏樹 | 「切っちまった方がいいな、じゃまた明後日な」 |
トンッ |
夏樹 | 「さて、明日か…」 |
夏樹はスマホを片付けて、バイクで家路を急ぐことにした。 |
……… |
翌日… |
夏樹 | 「この駅で良かったよな」 |
とある駅にバイクで乗りつけた夏樹。 |
夏樹 | 「どこだろ…ん?あのちっこいのは…」 |
夏樹はその視線の先にいた人に向けてバイクを走らせた。 |
夏樹 | 「到着…っと、お待たせ菜々」 |
夏樹が会うと言ってたのは菜々であった。 |
菜々 | 「夏樹さん!ナナのことよく分かりましたね」 |
夏樹 | 「雰囲気で何となく分かった。そういえば子供は?」 |
菜々 | 「今日はパパもお休みなんで、戻るまでの時間なら何とかなるから預けてきました」 |
菜々も今は現職の同僚と結婚して子持ちのママ。永遠の17歳の頃よりは若干柔らかく変わっていた。 |
夏樹 | 「そうか、よしじゃあ後ろ乗ってくれるか?」 |
菜々 | 「はい、お邪魔しますね」 |
夏樹 | 「…このヘルメットも長いな」 |
菜々 | 「8年前に夏樹さんに買ってもらってからずっと使ってますからね…」 |
夏樹 | 「ま、積もる話はまた後でな」 |
|
菜々と家族の住むマンション… |
菜々 | 「あ、その夏樹さんがアニメの主題歌をするって話聞きましたよ」 |
夏樹 | 「アニメ主題歌って本当に難しいな。どうも満足行かなくてさ」 |
菜々 | 「そういえば詳しくは聞かなかったんですけど、そのアニメってタイトルは何ですか?」 |
夏樹 | 「ああ、『○○○○○○○○』って深夜のらしい」 |
菜々 | 「えっ…!?」 |
夏樹 | 「どうした?菜々」 |
菜々 | 「それ…ナナ出ますよ」 |
夏樹 | 「…えっ!?本当か?」 |
菜々 | 「はい。半月前にオーディション受かったって電話でした話はそれのことです。まだ発表はされてないですけど」 |
菜々の現職はアイドル声優。どちらかといえば声優の方をメインにお仕事をしている。 |
夏樹 | 「それならどんな作品か詳しく教えてくれないか?資料だけで掴み切れなくてさ」 |
菜々 | 「いいですけど…結構昔から好きな作品なんで熱弁ふるっちゃいますよ」 |
夏樹 | 「別にいいよ。ぐっすり寝てるみたいだから、くれぐれも起こさないようにな」 |
菜々 | 「はい…それなら資料とか取ってきますね」 |
菜々は別室へと向かって行った。 |
夏樹 | 「まさか菜々がなあ…ま、確かに菜々も声優の一人だし」 |
菜々 | 「お待たせしました。えっとですね…」 |
|
夏樹 | 「そういう作品か…それで菜々は準主役なんだ」 |
菜々 | 「はい!産休明けで久しぶりにメイン役頑張っちゃいます!」 |
夏樹 | 「…そっか、それくらいのポジションなら頼めそうだな。菜々、ちょっといいか?」 |
菜々 | 「はい。何でしょう」 |
夏樹 | 「明日って時間あるか?」 |
菜々 | 「明日ですか?明日は………あ、午後なら保育園に預けていけば大丈夫ですね」 |
夏樹 | 「あのさ、…………」 |
……… |
翌日の収録スタジオ… |
菜々 | 『♪〜〜〜』 |
ブースへと響く夏樹ではない歌声。 |
夏樹 | 「久しぶりにちゃんとしたアイツの歌声を聴いたかもな…」 |
作曲者 | 『安部さんの歌が入れば行けそうだね』 |
夏樹 | 「この声が歌に必要だなって、昨日会った時に思ったんです」 |
作曲者 | 『ああ、昨日会うってそういう話?』 |
夏樹 | 「はい。まさかこのアニメに関わっていたのを、お互い昨日まで知らなかったんですけど」 |
作曲者 | 『こっちとしても一番の人選をしてきてくれて助かるよ』 |
夏樹 | 「アイドルの頃から10年近くの仲ですから」 |
作曲者 | 『ハハハ、じゃあこの収録が終わったら一発ビシッと決めてよ』 |
夏樹 | 「はい!」 |
そこには一昨日に無い気合を入れる夏樹の姿があったという。 |
そしてその楽曲は、なつななの再来が話題を呼び深夜アニメ楽曲としては異例の売り上げだったとか… |