In Mid-Winter(冬に至る頃に)

11月初頭のある日の事務所…
あずき「お仕事って何だろうね?柚ちゃん」
「何カナー、そう言うってことはあずきチャンも何も聞いてないんだー」
柚とあずきはプロデューサーに呼ばれて、会議室の一つで打ち合わせを待っていた。
あずき「うん。それにあずきたち2人だけなんだよね」
「確かにあずきチャンと一緒なのにフリスクじゃないって珍しいかも」
あずき「それに制服で来てって言われたけど…」
「ということは…もしかして何かアタシ達とんでもないことしちゃった!?」
あずき「ええーっ!何かラジオで問題発言とかしちゃったっけ?」
「それは無いと思うケド…どこかの人を怒らせちゃったとかカナ?」
あずき「うわーん、怒られるのはヤダよー」
「でももう時間だから覚悟を決めないとっ」
あずき「う、うん…」
そこに…
コンコン
『柚、あずき、二人とも来ているな?』
外からプロデューサーの声が聞こえてきた。
「はーい」
『今からお客様と一緒に入るから、片側のテーブルで並んで座っててくれるか?』
あずき「了解だよっ」
ガチャッ
「二人とも待たせて済まない。事前にこちらの方々と色々と打ち合わせることがあってな」
入ってきたプロデューサーの後ろにはスーツ姿の男女がいた。
「すみません、それではみなさんはこちらへお願いします」
佐島「ありがとうございます、では失礼しますね」
柚とあずきも神妙な面持ちで対峙した。
「柚、あずき、紹介するよ。こちらからJA□□の駒方さん、JA△△の鷹田さん、JA○○の蔵石さん、そして農水省の佐島さんだよ」
駒方「よろしくお願いします、JA□□の駒方です」
鷹田「JA△△の鷹田です、よろしくお願いします」
蔵石「JA○○から来ました蔵石です、よろしくお願いします」
佐島「農林水産省××局の佐島と申します、今日はよろしくお願いします」
「こちら紹介しますね、当プロダクションの喜多見と桃井です」
あずき「あ、はい。私が桃井あずきです」
「アタシが喜多見柚です」
「さて、まだ二人には話していなかったんだが新しいお仕事なんだ」
「どんなお仕事なの?プロデューサーサン」
「まず二人にはこの企画書を読んでほしい」
柚とあずきへと少し厚めの企画書が手渡された。
あずき「んーと…冬至に向けたプロモーションプロジェクト(仮)?」
「詳しくはまず佐島さんの方から説明を貰うから聞いてほしい。よろしくお願いします」
佐島「分かりました。こちらのホワイトボードをお借りしてよろしいですか?」
「はい、マーカーなども自由にお使いください」
佐島「感謝します。ではご説明します………」
………
「………だからアタシとあずきチャンなんだ」
あずき「柚ちゃんも小学生の頃はけっこう言われてたクチ?」
「言われてた言われてたっ」
説明を受けて納得した様子の柚とあずき。
「そういうわけなんだが、受けてもらえるか?」
「モチロンっ!でも料理もかー……」
あずき「これは特訓が必要そうだねっ。レシピはいただけるんですか?蔵石さん」
蔵石「はい、簡単なやり方から本格的なものまでいくつかご用意します」
あずき「特訓は響子ちゃんとか美紗希さんに付けてもらおうよ、柚ちゃん」
「そうだね。撮影日は……」
「撮影予定日なんだが、柚には申し訳ないんだけど来月2日は大丈夫か?」
「心配しなくても大丈夫だよ、プロデューサーサン。アタシの誕生日会は先に3日に入れてあるモン」
「それなら良かった。学校の方はどうだ?」
あずき「ちょっと待ってね。あずきは後期中間が翌週だからテスト休みだよ」
「アタシも学校は同じカナー」
「それならその日一日空けてもらおうかな。午前中はスタジオで料理、午後はその近くのスタジオでもう一つの撮影だ」
二人「「はーい」」
「それでは次の打ち合わせは再来週の同じ曜日に、今度はネット会議でお願いします」
 
時は流れて本番当日…
「流れについてはリハーサルで確認してほしい」
あずき「かぼちゃは差し替えるんだよねっ?」
「さすがに何もしていない時間が10分以上あってもってことでさ」
「響子チャンに特訓してもらったから大丈夫ダヨ」
「そういえば二人ともそのエプロンは自前?」
あずき「うんっ。前にクリスマスの時にフリスクの4人で料理作った時のだよー」
「見た感じはいいけど、使えるかどうか監督とかスタッフに確認を取ってからだな」
「そっか、柄でダメな場合もあるのカー」
「そういうこと。それじゃあ今日は一日二人とも頑張って」
二人「「はーい」」
………
撮影が終わってここは…
「ポカポカになったねー」
あずき「うん。お風呂の撮影温かかったー」
「でも今はもっと温かいけどね。ぎゅーっ」
あずき「柚ちゃんちょっと苦しいよーっ」
あずきは翌日土曜日にあるラジオのために柚の家へとお泊りしに来ていた。
あずき「でも柚ちゃんの身体温かいな……」
「あずきチャンも温かいよ……」
あずき「じゃあもっと温かくしてあげるっ。あずきからもぎゅーっ」
二人とも既に一緒のベッドの布団の中。
「エヘヘ、温かくて良い薫りだよあずきチャン」
あずき「今日は上手くいって良かったね」
「料理もお風呂も3回くらいでOKもらえて良かったよー」
あずき「お風呂はあの中で二人だけあんな格好だったから、ちょっぴり恥ずかしかったなぁ」
「男の人もいたし……下に水着は着てるけどアレは裸同然だもんネ」
あずき「あのキャンペーンCMは来週からだって言ってたけどさー……」
「あー……まだ学校あるよね。恥ずかしいけどこれもお仕事だから仕方ないかー」
あずき「これも学生アイドルの辛い所なのかな」
「じゃあもう気にしない大作戦カナ」
あずき「それはあずきのー!」
「アハハッ……でも楽しかったなぁ。今日はあずきチャンと二人だけのお仕事で」
あずき「あずきも今日はずっと笑顔でお仕事できたよ」
「良い誕生日プレゼントになったなー」
あずき「スタッフとかみんなでお祝いしてくれたねー」
「でもあずきチャンが傍に居てくれるのが一番のプレゼントだケド」
あずき「もう、柚ちゃんー……」
「今日は最後までありがと、あずきチャン……」
チュッ
あずき「柚ちゃん、今日は一日おつかれさま……」
チュッ
お互いに口づけをし合った二人。
あずき「またフリスクだけじゃなくて、二人っきりのお仕事欲しいなっ」
「たまにだから良いんだよねー、こーいうのって」
あずき「うんっ」
「じゃあそろそろ寝よっか」
あずき「明日もお仕事だし……おやすみ、柚ちゃん」
「おやすみ、あずきチャン……」
ピッ
寒い一夜に照明が落とされ、二人はお互いの温もりを感じ合っていく………
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あとがき
飛神宮子です。
フリルドスクエアの56本目。柚の誕生日SS2022です。
一気に冷えましたね…お風呂が恋しい季節になってきました。そういえば二人とも冬至に関係するなと思いまして…。
だからたまにはこの二人だけのお仕事でも良いかなと。二人だからこその雰囲気もきっとありますよね。
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2022・12・02FRI
飛神宮子
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