Mistakes that should not Happen(起こしてはいけない過ち)

遡ること2日前、事務所のとあるアイドルルームに衝撃が走った。
「な、何だって!?本当か忍」
電話で連絡を受けたプロデューサーはスマホを握りしめて叫んだ。
「アタシもあずきちゃんも連絡がつかないって。アタシ達も連絡付けようと頑張ってるんだけど…」
「分かった。俺も連絡取ってみるけど…そっちも無理しないようにな」
「うん。ラジオは明日は録音週だったから良かったけど…」
「そうだな…でも何か心当たりとかは無いか?寮で何かあったとか…」
「う、うん…それは無いことはないけど…」
「そうだ、寮はどうなってる?」
「それが、守秘義務とかで寮母さんも行き先を教えてくれないんだ。外泊届けは出ているらしいんだけど…」
「そうか…分かった。そっちには俺から連絡取ってみる。346の人間だから、俺からなら答えてくれると思う」
「そっか…そうだね」
「それで心当たりって何なんだ?」
「それがね…」
………
遡ることさらに1日前…
コンコン
穂乃香「はーい」
ガチャッ バタンッ
「穂乃香チャン遊びに来たよー」
穂乃香「柚ちゃんいらっしゃい」
寮の穂乃香の部屋に遊びに来た柚。
「忍チャン達は?」
穂乃香「もうすぐ来ると思います。今着替えてるそうですから」
「それじゃあ、アタシはこの人形たちと戯れてるカナー」
穂乃香「良いですけど、汚したりとかしないでくださいね」
「分かってる分かってる穂乃香チャン」
穂乃香「この前忍ちゃんのアクセサリーを汚して、あずきちゃんと一緒に大説教されたのは誰でした?」
「う…あ、あれは不可抗力で…反省してるモン」
穂乃香「それであの後はどうしたんですか?」
「謝り倒してなんとか許してもらえたよ。でも本当に怖かったナーあの時の忍チャン」
穂乃香「あれってプロデューサーに買ってもらった物って聞きましたよ」
「え?それ初耳なんだケド」
穂乃香「以前お話されてませんでした?誕生日の時にあらためて貰った物らしいですけど」
「そうなんだ、だからあれだけ怒ってたのかー」
穂乃香「前に練習用に買ってくれたものとは別で、それで大切なプレゼントの一つらしくて」
「それはアタシ達には言ってなかったカナ」
穂乃香「そうかもしれません……って柚ちゃん……」
「へ?」
柚はその時、手に持っていた物が手から離れていたことにようやく気が付いた。
「あっ……ゴメ……」
穂乃香「帰ってください」
「……ゴメン…穂乃香チャ……」
穂乃香「帰って!!今すぐに出てってください!!」
物凄い剣幕で捲し立てる穂乃香。その視線の先には柚の飲みかけの栓が開いたペットボトルと濡れた人形たちが…
「……うう…うん…ゴメン…」
ガチャッ バタンッ
自分のやった行為に言い訳ができないと悟った柚は、部屋を出るしかなかった。
………
「ここまでが柚ちゃんに聞いた話。詳しくは柚ちゃんに聞いてもらえればいいかな」
「分かった。その人形について詳しく分からないか?」
「どうだったかな…その時の柚ちゃん、ぐずっちゃって詳しく聞けなかったんだよね」
「柚がそこまでなるってことは、穂乃香も相当怒ってたってことか」
「たぶん…プロデューサーは何か心当たりある?」
「ちょっと待ってくれ…さっきの柚とあずきが忍に説教された話も初耳なんだけど」
「ああ…あれはさすがにね。だってプロデューサーに貰ったのあるでしょ?」
「去年の誕生日のヤツだよな?」
「それっ。片付け忘れてたアタシも悪かったけど、それに飲み物掛けられてさー」
「…あれ値段言ったっけか。さすがにそこまで安い物でもないけどな」
「それを笑いながら謝ってたからアタシもプチンっていっちゃって…」
「そうなると穂乃香も同じ状況っぽいな…」
「あー、なるほど。そうなるとぴにゃかな?」
「かもしれない。それ以上に大切な人形もあるかもしれないが…忍は何か知らないか?」
「ううん…分からないなぁ…」
「あれ?そういえば今日は会ってないのか?」
「今朝は気がついたら居なくなってて、一回も顔を合わせないまま居なくなってた」
「分かった。こうしてても埒が明かないから、俺は寮母さんに話を付けてみる」
「うん、こういう時頼れるのはプロデューサーしかないしお願いっ」
「何か分かったら連絡するから、くれぐれもそっちで大事にしないように頼む」
「了解だよ。あずきちゃんと柚ちゃんにも伝えておくね」
「よろしく頼むよ」
PI♪
プロデューサーは忍との通話を終えた。
「しかしなあ…まずは寮母さんに連絡してみるか」
♪〜
「もしもし、○○です。いつもお世話になっております。はい、それで外泊届けが出ている綾瀬についてなんですが…………分かりました、ありがとうございます」
Pi♪
寮母の話を聞いて安堵の表情を見せたプロデューサー。
「そういうことか。これは穂乃香に連絡取れたら取って、後は3人にも連絡しないとな」
プロデューサーは穂乃香へ電話を掛け始めた。
 
日付は進んで29日の昼過ぎ…
穂乃香「プロデューサーすみません、上野まで迎えに来ていただいて」
上野駅へと穂乃香を迎えに来たプロデューサー。
「心配したんだぞ穂乃香。突然居なくなったって言われてな」
穂乃香「それに関しては本当にすみませんでした。ショックでパニックになっていたので…」
「しかしな、みんな心配してたぞ。あずきも忍も、特に柚もな」
穂乃香「皆さんには本当に悪いことをしてしまいましたね…」
「それであれだろう?飲み物を掛けられた人形っていうのは…」
穂乃香「プロデューサーに昔買っていただいた限定のこの子とか、私のために作っていただいた世界に一つだけのこの子とかで…」
穂乃香の手には紙袋から出されたぴにゃこら太達がいた。
「でも大切な物ならどうして出してたんだ?」
穂乃香「そろそろ虫干ししようかなと思いまして、クローゼットから出しておいたら柚ちゃんに…」
「なるほど。それで電話に出なかったのは電車に乗っていたからだったんだな」
穂乃香「染み抜きはできるだけ早くということで、来た列車に乗った時に学校からそのままマナーモードにしてまして」
「バレエやっていた頃からの馴染みの店が名手だったのか」
穂乃香「繊細な衣装の染み抜きとかでお世話になっていまして…それで向こうに着いたら山のような着信履歴でした」
「ま、これ以上は詮索しないさ。寮に着いたら忍の部屋であずきと2人で用意して待ってるって」
穂乃香「用意して待ってる…あっ…今日って私の…」
「誕生日おめでとう穂乃香。俺からのプレゼントは忍たちに預かってもらってるから、そっちで受け取って」
穂乃香「分かりました。プロデューサーは来られませんか…」
「今回の件で色々あってその後処理な。これは仕方ないことだから穂乃香は気にしてなくていいよ」
穂乃香「色々ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
「これくらいなんてことはないさ。それでこれから池袋に行って柚を拾ってから寮に向かうから」
穂乃香「柚ちゃん…」
「寮までの車の中でちゃんと仲直りするように。それで今回の事は俺からは不問にするよ」
穂乃香「…ありがとうございます。分かりました」
その後、乗ってきた柚の泣きながらの謝罪に最後は胸へと抱きしめて許した穂乃香だった…
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あとがき
飛神宮子です。
フリルドスクエアの54本目。一日遅れですが穂乃香の誕生日SS2022です。
誕生日SSなのかは微妙ですが…穂乃香を怒らせてみました。
実際穂乃香もこの状況だと衝動的に言ってしまい、それも重なってきっとショック+パニック+放心状態になったのでしょう。
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2022・05・30MON
飛神宮子
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