Cloudy sky-Two Shiny Stars(曇り空 輝く二つ星)

今日も空は相変わらず。星のお祭りの日だけど、梅雨でもあるから仕方ないけどね…。
 
7月7日、あずきの誕生日の事務所のホール…
「今年もまた凄いネー」
あずき「これ何本あるんだろうねっ」
「ひーふーみー……大きいのが5本かな。あと小さいのが何本かって感じで」
穂乃香「他の部署や社員の方々も掛けているみたいですからね」
あずき達は放課後からのお仕事を終えて事務所へと戻っていた。
「4人ともおつかれさま」
あずき「プロデューサーさんおつかれさまっ」
「今日は学校まで迎えありがとね」
穂乃香「この空だったので、帰りも寄っていただけて助かりました」
「今日仕事入れたのはこっちだしさ、それくらいは当たり前だよ」
「おつかれさまー、今日はこれで解散だよネっ?」
「そうだけど、柚はこれから大丈夫なのか?」
「んー、サイアクあずきチャンのとこ泊まるカモ」
あずき「そうした方が良いかもねっ」
「夜遅くなるとか、天気が悪くなるとかならそっち泊まってこいってママも言ってたし」
「それならちゃんと親御さんに連絡しておくように」
「ハーイ」
「それからあずき、ちょっとこっち」
あずき「えっ、なになに?」
「はい、これは俺からだ。今日そっちに行けないからさ」
プロデューサーはあずきに紙包みを一つ渡した。
あずき「あっ、ありがとっ!」
「それから…さすが浴衣似合ってるよ」
あずき「……ありがと……」
穂乃香「あずきちゃん、顔紅いですね…」
「プロデューサーも平気でそういうこと言うしー」
「プロデューサーサン、アタシたちはどうなのカナー?」
「柚達も似合ってるよ。それはあずきの見立てだよな?」
「うん。それぞれに合ったワンポイントが入った柄でね」
穂乃香「着心地も良くて、今シーズンのこういう機会はこの一着が手放せなさそうです」
「だけど、あずきがこの中だと一番だなと思ったよ。あずきだけ特別な帯っぽい気がしたから」
あずき「プロデューサーさんにはやっぱりバレてたっ。柚ちゃん達にも気付かれなかったのにっ」
穂乃香「そうだったんですか?」
あずき「うん。この帯は特別な時にしか使わないって決めてたんだ」
「へー、知らなかったー」
「了解。これからパーティーなのにここに留めてスマンな。よし、じゃあまた…次は金曜日だな」
「プロデューサーサン、またねーっ」
穂乃香「おつかれさまでした」
あずき「金曜日ねーっ」
「さようならー」
4人はプロデューサーと別れて寮へと向かって行った。
 
寮のあずきの部屋…
あずき「ケーキ美味しかったねっ」
「さすがは志保サンだね。甘い物にはハズレ無しだよ」
4人はもう寝間着に着替えて話に花を咲かせていた。
「そういえばプロデューサーさんからもらったの何だったの?あずきちゃん」
あずき「あっ、そういえば開けてなかったっ。何だろなー」
ガサガサガサガサ
紙袋から出てきたのは…
あずき「わわっ、あずきが前に欲しいって言ってたけど憶えててくれてたんだ…」
「これって…チークかな?」
「あっ、雪菜さんがCMしてるシリーズの新色だよねっ」
あずき「そうそうっ。雪菜さんにサンプル貰ったんだけど付け心地も良いんだー」
「これ結構高かったんじゃないカナ?」
あずき「確か…三千円後半だった気がする。良い物もらったし、大切に使おうっと」
穂乃香「プロデューサーは私達のことよく見てくれていますね」
「チラっと見てたのとかポロっと言ったこととか憶えててくれてるし」
「それをこういう時にちゃんと出してくれるモンねー」
あずき「あっ、もちろんみんなのも大切に使うよっ……」
………
「そういえばさー、プロデューサーと別れる前のことだけどちょっといい?」
その談笑中にふと話を切り出した忍。
「何だい?忍クン」
「またそうやって柚ちゃん茶化すし」
あずき「どうしたのっ?忍ちゃん」
「あの帯の話なんだけど、柚ちゃん何もコメントしてなくなかった?」
「えっ…あっ…」
穂乃香「そういえば、私も忍ちゃんも驚いてましたけど…」
「何かちょっと気になったんだよねー」
「あっ、そ、そうだったカナー?」
穂乃香「柚ちゃん、何か知ってたんですか?」
「あー、もう白状するモン。アタシは何となくだけど知ってたのっ」
あずき「柚ちゃん…」
「だって浴衣であの帯してるの、アタシと二人っきりで花火とかお祭りの時もだったモン……」
「なるほどね」
あずき「柚ちゃんはあずきにとって大切な人だから、気合い入れたいしっ」
「でも今日はどうして…?」
あずき「誕生日だし、柚ちゃんと一緒のお仕事だし……」
「それに?」
あずき「……柚ちゃん今日は泊ってくれるかもだったから……」
忍・穂乃香『あー……』
「あずきチャン…」
あずき「柚ちゃん…」
次第に顔が近付くあずきと柚。
「はいはい、そこまで。アタシ達そろそろ点呼で帰るから、続きはそれからね」
穂乃香「そうですね、そろそろお暇しましょう」
あずき「明日って柚ちゃん何時に出るの?」
「朝6時過ぎカナー。教科書は学校だけど、シャツとか替えたいから一度家に戻らないとだし」
あずき「よく寮に来るからあずきのとこにキャミとか下着なら柚ちゃんのが1セットあるよっ」
「シャツならアタシのとこに一昨日ずぶ濡れで来た時に、アタシの服の代わりに脱いで置いてったのがあるけど?ちゃんと洗ってあるよ」
穂乃香「この前欲しいって言っていたサマーニットのベスト、ここの所の雨で出られなかったのでもう編みあがってますよ」
「あれ?あれ?1セットあるネ……」
「じゃあアタシ達、点呼終わった後に届けるよ。行こう、穂乃香ちゃん」
穂乃香「そうですね。また後で来ます」
ガチャっ バタンッ
忍と穂乃香は点呼のために自室へと戻った。
「じゃあ明日はもう少しゆっくりでもいいカナー」
あずき「その分、今日はもっとゆっくりできるね」
「うん…」
あずき「今日は星は見えなくても…ねっ、柚星さま」
「空の二人に負けないくらい…ネ、あず姫さま」
星の物語の日…たとえ空を雲が覆えども、二人のストーリーは負けないくらい輝いて紡がれる…
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あとがき
飛神宮子です。
フリルドスクエアの50本目。あずきの誕生日SS2021です。
梅雨真っ只中で心配な場所もありますね。今年は沖縄以外星空が拝めそうにもありません。
星空は無くても輝く星がそこにある、それだけで良いのかもしれません。
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2021・07・07WED
飛神宮子
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