Even Though you are Beyond now...(今は彼方に貴方がいても…)

12月の第1土曜日のこと…
あずき「桃井あずきの、フリルドクロッシング!!」
♪〜
あずき「11時〜!今週もフリクロスタートだよっ」
いつもよりどことなく沈みがち声がラジオから流れ出す。
あずき「この番組はフリルドスクエアの埼玉出身喜多見柚と長野出身桃井あずきが、北関東と信越のアイドル情報や私たちフリスクのこととかを…」
そのあずきの口調はどこか早口である。
あずき「埼玉の××からラジオ局6局をネットして、ゆるくお喋りする番組…なんだけど今日は柚ちゃんが明日のライブ出演のためにお休みだよぉ…」
本気なのかどうなのか、あずきの言葉から寂しそうな雰囲気を醸し出ていた。
あずき「そう言ってても仕方ないかっ!なので今日は番組SNSで緊急予告した通り登場してもらうよ、どうぞっ」
「はい、フリクロをお聴きのみんな、こんにちは。今日はこっちと合同放送でお送りするよ、工藤忍と…」
穂乃香「お聴きの皆さんこんにちは、綾瀬穂乃香です。今日はフリネットと合同放送になりました」
あずき「明日誕生日なのに主役がいないってねー」
「ライブの日程がそうなってるからしょうがないんだけどね」
穂乃香「ファンの方々にお祝いしてもらえるならそれが一番かと思います」
あずき「それもそっか…そうだねっ」
「ちなみに柚ちゃんは昨日の夜の新幹線で名古屋に行ったよ」
あずき「明日の午前中に最終確認リハだって電話で言ってたねっ」
穂乃香「昨日みんなで見送りに行ったんです。他の出演する方々と一緒だったんですが、座席に着いてからも一生懸命手を振り返してくれてましたね」
「そうだったね、ホームにいる人たちにあんな注目されるとは思わなかったよ」
あずき「あれはあずき達も恥ずかしかったね」
穂乃香「今頃は今日の出演の方々の最終リハ最中でしょうか」
「柚ちゃんもおそらくそれを見てるだろうね」
あずき「あ、そうそう。そんな柚ちゃんからメールを預かってるから読んじゃうよ」
「え?それは聞いてないんだけど」
あずき「あずきが個人的に貰ったのだからね。えーと、『フリクロを聴いてるみんなこんにちはっ。アタシは今は名古屋にいるよー』」
穂乃香「あずきちゃんに送ったってことは、読んでもらうこともきっと想定してたんでしょうね」
あずき「『仲間のみんなはいるけど、やっぱりあずきちゃん達と離れるのはちょっとだけ寂しいなって。でも頑張るからね!』だって」
「頑張って欲しいね。柚ちゃんの晴れ舞台、アタシ達も今日の夜に行って関係者席で見ることにはなってるけどさ」
あずき「あ、そうだ。この後どこかで名古屋にいる柚ちゃんと電話繋ぐんだ」
穂乃香「柚ちゃんの生の声を少しでも届けられたらと思います」
あずき「柚ちゃんの誕生日記念はちゃんと来週にやるよっ」
「アタシ達の番組も来週は年末の調整で生放送になるから、ちゃんとしたお祝いはその時だね」
穂乃香「それで今日は何をやるんですか?あずきちゃん」
あずき「あ、そうだね。今日はシャトル・ハートがお休みになるよっ」
「その代わりに救いの女神ASHとしてみんなの悩みをたっぷり聞くんだよね」
穂乃香「まだ質問はお悩みは間に合いますよ」
あずき「今日のテーマと合わせて送ってねっ。今日のテーマは今柚ちゃんのいる『名古屋とか愛知について』っ」
「メールは〜〜〜、FAXの方は埼玉048の〜〜〜まで待ってるよー」
穂乃香「ツイッ●ーのハッシュタグは#〜〜〜〜です。呟いた内容も読むかもしれないです」
あずき「それではここで1曲行こっ。もう冬だねってことでこの曲だよ、『Snow*Love』を…」
三人『どうぞっ!』
♪〜
………
あずき「それではここで柚ちゃんに電話がつながったみたいなので繋ぎまーす。柚ちゃーんっ」
『もしもーし、あずきチャンー?』
あずき「柚ちゃん、そっちは今何してるところ?」
『こっちは今は初日組のリハが終わって休憩中だぞー』
あずき「そうなんだっ」
「柚ちゃんこんにちはー」
穂乃香「柚ちゃん元気ですか?」
『あれ?穂乃香チャンに忍チャンまでいるのっ?』
あずき「今日はせっかくのこんな日にあずき一人だと寂しいから、合同放送にしてもらったんだよ」
『あー、そうだったんだ。ゴメンネ、忍チャンも穂乃香チャンも』
あずき「えー、あずきにはー?」
『もちろんあずきチャンもだけどネー』
穂乃香「後ろが騒がしいということは楽屋ですか?」
『うんっ。あ、そうだっちょっと待っててっ』
穂乃香「…何でしょうかね?」
「あの感じだときっと…何か分かったかも」
『ゴメンネー、はいちょっと電話変わるよっ』
『柚ちゃんコレってなにー?』
『アタシが毎週やってるラジオの生放送中ー』
『えー、そうなんだー。あ、もしもーし』
あずき「その声は…唯さんかなっ?」
『そだよー、大槻唯でーす!これって埼玉も放送されてんだっけ?』
穂乃香「はい、埼玉から北の県ですよ」
『そうなんだー。ゆいはこれから柚ちゃん達と二日目のリハなんだよー』
穂乃香「唯さんも柚ちゃんと同じ日でしたね。アタシ達も今日の夜そっちに行ってライブ観ますよ」
『そうなんだ、それならよろよろー。んじゃ、柚ちゃんに戻すねー。ほいっ』
『あずきチャン達、今日の夜こっちに来るんだよネー?』
あずき「そうだよっ。明日のライブばっちり観るからねー」
穂乃香「まずはリハの方、頑張ってきてくださいね」
『うんっ。みんなの代表として行ってくるぞー』
「それじゃあまた後でねー」
『はーい』
………
その夜の346プロ関係者が何フロアか貸し切ったホテル…
あずき「ここが柚ちゃんの部屋なんだっ」
「うん。昨日は一人で使ってたけどネ」
あずき「今日と明日のライブを見に来た人もみんな泊まってるから、事務所みたいだね」
「こんな遠くでも見知った顔がいっぱい居ると安心するよ」
あずき「でもさ…」
ぎゅっ
あずき「今日の放送で柚ちゃんが居なかったのは寂しかったよ…」
「あずきチャン…」
あずき「柚ちゃん…」
「はいはい、二人ともお熱いことお熱いこと」
穂乃香「忍ちゃん、別に止めなくても良かったような…」
「アタシ達、このバカップルののろけを見るために来たんじゃないんだけど?」
あずき「せっかく良い雰囲気大作戦だったのにー」
「そういえば忍チャン達は一つ下の階に泊まりだっけ?」
「うん。もう遅いし明日のためにお祝いしてコレ渡したら戻るよ」
穂乃香「そうですね。一日早いですけどね」
あずき「明日戻ってからだと遅くなっちゃうかもしれないからねっ」
穂乃香「明日はまずファンの方々にいっぱい祝ってもらってください」
「開けてみていい?」
「いいよ、アタシと穂乃香ちゃんの二人からだからさ」
あずき「おおー、その袋ってカーディガンとパーカーだったんだっ」
穂乃香「似合いそうなの結構探しましたよね」
「結局、仙台でコレだっていうのがやっと見つかってさー」
「二人ともありがとー。大切に着るねっ」
「それじゃあ後は二人でゆっくり休んでね」
穂乃香「おやすみなさい、柚ちゃん、あずきちゃん」
「おやすみー」
ガチャっ バタンッ
穂乃香と忍は自分の泊まる部屋へと戻っていった。
「二人っきりになっちゃったネ…」
あずき「うん…」
「あのさ…さっきあずきチャンが、『今日の放送で』って言ったでしょ」
あずき「言ったね…」
「アタシも仲間はいたけど…一番の仲間がいなくて…不安で…寂しかったんだ…」
あずき「柚ちゃん…」
「本当はみんな明日来る予定だったんだよね」
あずき「今日の収録とかライブがあるからって先週に繰り上げてもらったりして…色々大変だったけどっ」
「こんなに頑張って、アタシのためにしてくれる仲間がいる…アタシって幸せ者なんだなって思ったよ」
あずき「だって…だってっ、こんなにあずき達以上に晴れ舞台に向けて頑張ってきてくれる、柚ちゃんは大切な仲間だもん」
「あずきチャン…ありがと…」
あずき「柚ちゃん…お礼なんかいいよ」
「ねえあずきチャン、一つだけ…いいカナ?」
あずき「…ん?」
「アタシの不安を拭う物…あずきチャンからもらいたいんだケド…」
あずき「…うん…これで柚ちゃんが頑張って来れるなら…ね」
そんな二人の唇が触れ合う頃、時計の針は12月2日を迎える刻を刻んでいた…
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あとがき
飛神宮子です。
フリルドスクエアの40本目兼復帰1作目、柚の誕生日SSです。
しばらく更新休止していてスミマセン。夏の祖母の入院やPCの調子不良などが重なっていまして…。12月からは本格復帰します。
Happy Birthday Yuzu KITAMI!!
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2018・11・30FRI
飛神宮子
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