Four Connection, Eight "N"(4つの繋がり、8つの「ん」)

喜多見柚:コンセント
ある日のプロデューサールーム…
コンコン
「はい」
ガチャっ
「失礼しまーす」
「柚か。どうしたんだ?」
「プロデューサーサン、この部屋のコンセントって空いてる?」
「藪から棒にどうしたんだ?いや、そこのが空いてるけどさ」
「ちょっと借りてもいーかなっ」
「俺が部屋にいる間なら構わないぞ」
「ありがとー」
柚は応接テーブルの近くのコンセントへとスマホの充電器を差し込んだ。
「アイドルルームのはどうしたんだ?」
「ロッカールームの方もぜーんぶ使われちゃってたんだっ」
「まあいいけど…あ、そうか。アイドルルームのは今日工事で少なかったんだな」
「そうそう。だから残ったコンセントの取り合いになっちゃってねー」
「それは悪いことしたなあ…柚はここに逃げ込んだってわけか」
「だって空いてそうだったんだもん。だからコッソリ来ちゃったっ」
「そういえばあとの3人は?」
「穂乃香チャンと忍チャンはアイドルルームの方にいるよっ。あずきチャンはロッカールームで充電してるみたい」
「そうか、それならいいんだけど…」
そこに…
コンコン
「はい」
ガチャっ
穂乃香「失礼します。あ、柚ちゃんここにいたんですね」
「穂乃香チャンだー、どうしたの?」
穂乃香「プロデューサーさん、一つお願いがありまして」
「ん?どうしたんだ」
穂乃香「私の学校の年間予定表を見ていただければ分かるかと思うのですが…」
 
綾瀬穂乃香:参観日
キーンコーンカーンコーン
先生『では今日はここまでにしよう。宿題は配布したプリントで残した大問5と6を次の授業までにやってくるように、以上です』
生徒『起立! ありがとうございました』 『ありがとうございましたー』
先生『このままSHRに入るから座って…』
………
その後、一人の少女がプロデューサーの運転する車の助手席へと座っていた。
穂乃香「今日は来ていただいてありがとうございました」
「いいんだよ。こっちもこういうことだって、きちんと親御さんに報告しないとだからね」
穂乃香「無理していませんか?今日は元々は別のお仕事だって聞いてましたから…」
「これもいい気分転換になるもんだよ。それに仕事だったら先輩や後輩にも頼めるし」
穂乃香「そうですか…」
「それは穂乃香が気にすることじゃないよ。まだ学生なんだからそこらへんは甘えてもらっていいんだ」
穂乃香「そう…ですね」
「それで今日はもう寮でいいのかい?」
穂乃香「はい。今日は土曜参観と懇談をお願いしていたので特にレッスンも入れませんでしたし」
「どこか寄る必要があれば寄るけど」
穂乃香「あっ…それならホームセンターへお願いできますか?寮の役員会で必要なものがありました」
「了解。この近くだと……」
………
穂乃香「部屋まで運んでいただいて助かりました」
「さすがに寮の人数ともなると凄い量だなって思ったよ」
穂乃香「だから買い出しは車のある時でないと難しいことも多いんです」
「そうだろうなぁ…よし、じゃあ俺は帰るよ」
穂乃香「はい、今日は色々とありがとうございました」
プロデューサーが穂乃香と別れて寮の廊下を歩いていくと…
「お、そこに居るのはあずきだな?」
あずき「あ、プロデューサーさんだっ。どうしたの?」
「今日は穂乃香の付き添いで色々とな。ラジオはちゃんと聞いてたよ。それでこれから…」
 
桃井あずき:洗面器
あずき「そうだよっ、これからちょうどお風呂なんだっ」
「やっぱり男と違うな。着替えは別持ちだしさ」
あずき「あれ?プロデューサーさんもこういうことしてたことあるの?」
「ああ。寮生活してた時期もあったからな、風呂に行く時は同じように洗面器に道具を入れて持ったもんだよ」
あずき「へぇ…そうなんだー」
「これから風呂行くってところで邪魔しちゃったな」
あずき「んーん、いいのいいのっ。それで穂乃香ちゃんの付き添いって何があったの?」
「今日は穂乃香の高校が土曜参観でな。学級懇談もあるから親御さんの代わりに来てほしいって話でさ」
あずき「なるほどねー。あずきのとこもあったら来てくれるの?」
「親御さんからの要望があればな。仕事の兼ね合いってのもあるし」
あずき「そうだよねー、うんっ」
「あ、そうだ。忍の部屋って1階の何号室だったっけ?」
あずき「忍ちゃん?1階の107号室だよ」
「分かった。ありがとな、あずき」
………
ガラガラガラ ガラガラガラ ピシャンッ
大浴場へと入ったあずき。
あずき「ふぅ…寮で会うなんてビックリしたなぁ」
洗い場に洗面器を置いて、浴槽の方へと移動し…
ザパンッ ジャプンッ
そして軽く身体を流して浴槽へと浸かった。
あずき「んーっ、気持ちいいなーっ」
浴槽の中で全身を伸ばしたあずき。
あずき「そういえば忍ちゃんに何の用事だったんだろ?」
あずきには思い当たるフシが無いようだ。
あずき「まあいっか、後で聞こっと。寒いからじっくり浸からないとねー……」
 
工藤忍:乾電池
♪〜
寮のとある居室のベルが鳴った。
「誰だろ?はーい」
ガチャっ
「忍、居るか?」
「あ、プロデューサーさん。どうしたの?」
「はい。さっき穂乃香のLINEでお使い頼んでたのを持ってきたよ」
「わっ、ありがとう。これが無いと動かなくてねー」
「今どき乾電池で動かす物なんかあるのか?」
「ほらこれ、非常時に使うんだから電池じゃないと」
「あー、懐中電灯とか携帯ラジオ…携帯ラジオ?また珍しい物持ってるんだな」
「これ便利なんだよ。大きなの動かさなくても、枕元でも置いておけるし」
「枕元ってことはまだ方言直すのに深夜放送とか聞いてる?」
「やっぱりたまに出ちゃうこともあるからねー…今でもたまに聞くよ」
「多少はそういうところが出てもいい気がするけどな」
「んー、とは言ってもさ、沙織さんには勝てそうにないし」
「方言を個性にしてるからな。津軽弁と秋田弁は違うんだろうけど」
「近くないけど遠くないから、似たような感じになっちゃう気がして」
「実家に電話してる時は出ちゃうんだろ?」
「やっぱりね。プロデューサーさんもそうじゃないの?」
「まあ多少は出るもんだよな」
「イメージも大事なお仕事だしさ、見せる部分はちゃんと見せていかないとって思ってるもん」
「そっか…」
「あれ?電話だ…柚ちゃんどうしたの?…明日?また急だね…」
「さて、電話してる間にお暇した方がいいな…」
「宿題は今日のうちにやってるからいいけどさ……」
 
この四人の支えになり続けていきたい!そう感嘆符を付ける程に思ったプロデューサーであった…
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あとがき
飛神宮子です。
月刊フリルドスクエアの30本目。
前々から温めていた「○ん○ん○」となる言葉をテーマにした連作をこのフリスク4人でやってみました。
他に候補としては「炎天下」や「輪転機」、「心電図」や「ケンケンパ」なんてのもありましたよ。もう一度やってもいいかなとも思っています。
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2017・10・28SAT
飛神宮子
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