Fireworks -Brightness of Youth-(花火…青春の輝き)

8月の第1土曜日のこと…
穂乃香「穂乃香と」
「忍の」
二人『フリルドネットワーク!!』
♪〜
音楽とともにパーソナリティの穂乃香と忍が喋り始めた。
穂乃香「時刻は11時になりました。皆さんこんにちは、フリスクの綾瀬穂乃香です」
「こんにちは、工藤忍だよ」
穂乃香「この番組は仙台の○○をキーステーションに東北のXXX系列全6局をネットしてお送りします」
「今日はこの音を聴いて分かるかな?」
穂乃香「少し聞こえ辛い放送になったら申しわけありません」
「始まる直前くらいまでで収録は終わる予定だけどね」
穂乃香「今日はいつものスタジオを飛び出しまして、仙台七夕花火の会場近くの場所からお送りします」
「いつもだと収録はお昼過ぎだから新鮮だなー」
穂乃香「そうですね。珍しく夕方ですし…今日は服も着替えてからですから」
「でも本当にここ特等席だよ。スタッフさんもいいところ知ってるね」
穂乃香「はい。それで今回のテーマは『花火』とさせてもらいました」
「たぶん先週の放送当日だったから、テーマの理由はバレていただろうけどね」
穂乃香「それでですね、今週は特別にフリクロとのクロストークもあります」
「今週分は向こうも収録だから、同じ時間に合わせてもらったんだ」
穂乃香「この後はご存知の方もいらっしゃるかもしれません」
「アタシ達、この後の花火でちょっとレポーターもするからね」
穂乃香「そちらの放送もこのラジオと前後するくらいかと思いますので、お楽しみにどうぞ」
「さて、そろそろ今日の一曲行こっか」
穂乃香「そうですね。では一ノ瀬志希さんで『秘密のトワレ』をどうぞ」
………
穂乃香「エンディングです。来週は生放送の週となります」
「来週19日のテーマはちょっと早いけど『宿題』にしたよ」
穂乃香「26日のテーマにとも考えたのですが、その日はぜひ宿題に充ててもらいたいと思いました」
「穂乃香ちゃんはどれくらい終わってる?」
穂乃香「私は7月中に粗方片付けてしまいました。レッスンもありますし、多く時間が取れないですから」
「アタシは残り1/3かな。課題の方は割と片付けたけどさー」
穂乃香「今日も悩んでいたものですよね」
「それそれ。まだ時間はあるからゆっくり考えようかなって」
穂乃香「お手伝いできることがあればいつでもいいですよ、忍ちゃん」
「うん。でもまーた二人して来るかな?」
穂乃香「…来ないことを願いたいですが…」
「ま、来たら来たでしょうがないか」
穂乃香「今年は心を鬼にしたいところですが、無理かもしれないです」
「穂乃香ちゃん、何だかんだ優しいもん」
穂乃香「フフフ、そうかもしれません…あ、はい。来週は生放送ですのでFAXもお待ちしています」
「FAXは仙台022〜〜〜、メールは〜〜〜@〜〜〜まで。もちろんふつおたやコーナーへのお手紙も待ってるよ」
穂乃香「そろそろ花火の時間でしょうか」
「え?もうそんな時間?」
穂乃香「このくらいの暗さになったら始まるはず…」
ドンっ…
「うわぁっ…ホントだ…」
穂乃香「いつ観ても…綺麗ですね…」
二人の目の前の空、様々な色の炎による一瞬の芸術が描かれていく。
穂乃香「それでは今週もお別れの時間です。お相手はフリルドスクエアの綾瀬穂乃香と」
「工藤忍でした。また来週も…」
二人『6つの場所を丸く繋げてフリネット!』
♪〜
………
ラジオの収録も終わり、レポーターの仕事も無事に終えて、その後某所で花火を観終えた二人。
「ふぅ〜…今日はお仕事多くて疲れたーっ」
穂乃香「おつかれさまです、忍ちゃん。お湯加減はどうですか?」
「おつかれさま、穂乃香ちゃん。うん、バッチリっ」
二人は穂乃香の家のお風呂に浸かっていた。
穂乃香「こうして泊まっても問題なくて、今日がまだ夏休みで良かったです」
「でもやっぱりここまで移動するのは混雑してたね」
穂乃香「いつも帰りは大変ですから。今回はまだ花火大会の時間内だったのでそこまでではなかったですが…」
「それでさ…穂乃香ちゃんは本当に良かったの…?」
穂乃香「えっ…?」
「ゴメンっ!さっきは勢いでさ…」
 
時は花火大会中に遡る…
「ここもよく見える場所だね」
穂乃香「ここなら誰にも邪魔はされないでゆっくり観られますから」
そこは…
「こうして屋根の上から観るのって憧れたなー」
穂乃香「もう時間はそれほど無いですけど今日は存分に楽しんでください、忍ちゃん」
「そうさせてもらうよ。穂乃香ちゃん、飲み物ってどこだっけ?」
穂乃香「飲み物は確か…」
ピトッ
暗い中、穂乃香が手探りしていた手が忍の手へと触れた。
「あ、ご、ゴメンっ」
穂乃香「え、あっ…うん…こっちこそすみません…。それで飲み物は後ろでしたか」
「あっ、そういえばそうだったね」
穂乃香「はい、忍ちゃんはこっちですよね」
「ありがと。穂乃香ちゃんは飲まない?」
穂乃香「私もいただきます」
「じゃあ…」
二人『カンパイっ』
「…ふう…何かさ…二人っきりで観てるのってさ…」
穂乃香「…んくっ…はい…」
「青森の友達とかもそうだったんだよね…恋人同士でさ…」
穂乃香「分かります。私の友人グループでもいつの間にか居なくなったりして…」
「探すんだけど連絡つかないとかで、結局次の学校の日に話を聞いたりして」
穂乃香「相手の人も同じクラスだと、ちょっと視線の向け方が違ったりしてるんですよね」
「それが何かこっちまで感じちゃうから不思議だよ」
穂乃香「今だと事務所の皆さんでしょうか」
「一番近いトコだと、やっぱりあずきちゃんと柚ちゃんだね」
穂乃香「今日のクロストークも何だか声が上擦ってましたね」
「あの後、二人も花火観に行くって言ってたからさー」
穂乃香「そうでしたね。あの二人もきっと…そうなんでしょうね…」
「ね、ねえ穂乃香ちゃん…」
穂乃香「何でしょう…忍ちゃん」
「…アタシも欲しいな…」
穂乃香「えっ…?」
言葉とともに穂乃香が忍の方を向いたその刹那…
チュッ…
キョトンとする穂乃香の眼は覚悟を決めた忍の眼を確かに捕らえていた。
「………穂乃香…ちゃん?」
穂乃香「………どうして………」
「ご、ゴメンっ…!」
穂乃香「…謝らないでください忍ちゃん………」
「………でも………」
穂乃香「………ううん、いつかこうなるのが自然だったんです…」
「穂乃香ちゃん…ううん、穂乃香…」
穂乃香「忍…さんのことは、一緒になった時からきっと、ずっと…」
「……大好きだよ…穂乃香」
穂乃香「忍さん…私も…」
二人の唇がもう一度結ばれる頃、空には一際大きな火の芸術が描かれていった…
 
時は戻ってお風呂の中…
穂乃香「忍ちゃんは勢いだって言いましたけど、私もこうなりたかったのは同じです」
「アタシ、急に怖くなったんだ。これで関係が壊れちゃったらって思ったらさ…」
穂乃香「昔の私だったらそうだったかもしれません。昔の忍ちゃんがこういう立場でもきっとそうだったと思います」
「あ、うん。あの頃はまだ焦っていて尖っていたもん」
穂乃香「私にとって少しずつ互いを研磨して、綺麗に輝かせてくれたのが忍ちゃんでしたから」
「うん…ありがと…」
二つの想い、それは花火の夜の光に照らされて、何よりも大きな一つの想いの影へとなっていく…
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あとがき
飛神宮子です。
月刊フリルドスクエアの28本目 兼 今月の百合百合枠1本目。というか今月は全4本百合百合枠です。
毎年花火は観る機会があるのですが、どうして空の炎の芸術にあれほどまでに魅了されるものなのでしょうか。
輝きを魅せるのはアイドルもまた同じ。ダイヤモンドのように互いを磨き上げる二人であり続けて欲しいです。
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2017・08・27SUN
飛神宮子
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