Two girls in Vernant(春の二人)

うららかな春の日の午前のこと…
「ちょっと出かけてくるね、お母さん」
「ええ、行ってらっしゃい八重」
「どこ行くん?八重ちゃん」
「八重ちゃん、どっか行くの?」
「はい、ちょっと買いたい物がありまして。すぐ帰ってきますから」
「そうなん、ならついでに買うてきて欲しいもんがあるんやけど」
「いいですけど、何ですか?」
「えっと…八重ちゃんちょっと耳貸してくれへん?」
「はい…」
「………の……、ええか?」
「ちょっと待ってください、今メモを取りますから………はい、分かりました」
「あー、私もあるんじゃけどいいかな?」
「はい、何ですか?多汰美さん」
「………の……、そんなにかさ張る物じゃないじゃろけど」
「分かりました………、よしっと。それじゃあ…あ!」
「何じゃろ?八重ちゃん」
「あのー、お二人さん。買うために必要なものを頂かないと…」
「あー、そうじゃった。今持ってくるね」
「私も今持ってくるさかい、待っとってや」
………
「それじゃあ行ってきます」
「「行ってらっしゃーい」」
バタン
「多汰美、八重ちゃんに何頼んだん?」
「えっと雑誌なんじゃけど、今日がギリギリ発売日なんじゃよ」
「私はCDなんやけど、売っとらんかったらどないしようか…」
「まあ任せておこ、心配してても行っちゃったししょうがないじゃろ」
「せやな、私らはゲームの途中やしな」
「そうじゃったね、あと15年じゃったっけ」
何のゲームかよく分かるようなセリフを残して、二人は多汰美の部屋へと戻った。
………
「えと…CDショップは確か…あ、あった」
そこは街中で一番大きいCDショップ…と言うよりタワー。
「あれ?このCDのアーティスト、聞いてなかった…どうしよう」
「あれ?七瀬、どうしたの?」
「あ、にわちゃん。ちょっと困ってて…」
「え?ちょっとそれ見せて。あ…それならちょっとついて来て七瀬」
「はい…あー、ちょっと待ってくださいー」
と、にわについて来た先には…
「多分これだと思うけど、一応電話して確かめてみたら?」
「一応そうすることにします」
ピピピ ピピピ ピピピ
『もしもし八重ちゃん、CDあったん?』
「あ、真紀子さん。CDのアーティストなんですけど…」
『私アーティスト言うてなかったっけ?』
「いえ、私が書き止め忘れちゃってて…誰でしたっけ?」
『………やけど、多分黒いCDやったはずやで。』
「じゃあこれですね、洋楽のですよね」
『せや…って何でアーティストも知らんと、アーティスト分かったん?』
「にわちゃんがちょうどCDショップに居て、このCDを知ってたんで教えてもらいました」
『なるほどな、ほんなら買うてきてなー。』
「はいー」
ピッ
「これで良いそうです。それじゃあ行きましょう、にわちゃん」
「そうね…って買い物に私がお邪魔しちゃっていいの?」
「いいですよ。まだ買う物がありますから、一緒に行きましょう」
「それじゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」
………
そして本屋へ…
「由崎、こんなの読むわけ…?」
「はい。使ってない部屋の押入れに、バックナンバーが2年分ありますよ」
「そういえばゲーム機あったのよね、由崎の部屋って」
「たぶん今、○太郎×鉄を真紀子さんとやってるはずですから。何か変則ルールみたいですけど」
「え?変則ルールって…?」
「確か『目的地に着かない』だったかと…出る前に残り15年とか言ってましたし」
「げ!何やってるんだか…まったくねえ」
「けっこう楽しんでるみたいですよ、私も変則ルールじゃないですけど変なルールで一回やらされましたから」
「な、何だったの?その時のルールって」
「ラーメン屋を一番多く所有した人が勝ちってルールでした、確か」
「はあ…好きでやってるなら文句言えないけど…」
「とにかく買って行きましょう、まだ行く所がありますから」
「え?まだあるんだ」
「私の目的の物がまだだったんで。それに、にわちゃんもでしょ?」
「あー、私はいいの…うん」
「そんなこと言わずに、これを買ったら次はにわちゃんですっ」
「本当にいいのね?それならいいけど…」
「???はい」
その雑誌を買って次に向かった先は、実は八重の目的の場所と同じだった…
………
「その…最近…」
「ちょっと大きくなったってこと?」
「…だから恥ずかしくて、一人で買いにこようと思って…」
「それなら任して、似合ってるのを選んであげるから」
「え?えっと…はい。にわちゃん、お願いします」
「その代わり、私のを選ぶのも手伝ってね。七瀬なら信用できるから」
「それじゃあ、まずはにわちゃんのからね」
「うん」
………
「ただいまー」 「おじゃましまーす」
「おかえりー。何やにわも一緒かい」
「おかえりなさい、八重。あら、潦さんも一緒なのね」
「おかえりー八重ちゃん。にわちゃん、どうしたん?」
「いえ、ちょうどお昼時なんで一緒に昼ごはんにしようって思いまして」
「もうそんな時間やったっけ、私ら何時間やっとったんやろ、あれ」
「もう分からんよー、あと2年はご飯食べてからじゃね」
「あんたたちまだやってたの?」
「あら、それじゃあ5人分作らないとね。八重、手伝ってちょうだい」
「はーい。あ、にわちゃん。この袋、私の部屋に置いといてもらえます?」
「うん。あ…青野に由崎、これ…約束の物だって」
「あー、ありがとな。これ聴きたかったんや」
「これこれ、今月の新作は何じゃろなー」
………
そして食卓で…
「ところで八重ちゃん、何買うてきたん?」
「言えません、秘密にします」
「教えてよー、私と八重ちゃんの仲じゃろ」
「ちょっと、七瀬が話したくないんだから。ね、七瀬」
「はい、今回だけはちょっと…」
「ほんならええよ、無理して話さんでも」
「だね、話せないって言ったらアレかアレじゃろうし」
二人が色々思考している中、顔を見合わせて微笑む八重とにわであった…
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あとがき
初の4コママンガ題材SS、いかがだったでしょう?
そろそろ主要2部門から一部脱却しようと思いまして、始めてみました。
題材としてはいっぱいあるので、けっこう書けそうです。
こっちのHNは「観飛都古」でいこうと思います。
ではでは、これからもよろしくお願いします。
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2006・01・20FRI
観飛都古
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