Good luck Talisman(縁起物)
ここは遠野家のキッチン…
「でーきたっと♪」
何やらニコニコ顔で料理を作り終えた女性が一人。
「今日の夕食は、これを食べてもらいましょ」
そこに…
「姉さん、そろそろ食事の時間ですが」
「翡翠ちゃんちょうど良かったわ。秋葉様と志貴さんを呼んできてもらえる?」
「分かりました」
………
ここは遠野家の食卓…
「はい、翡翠ちゃんも」
「姉さん、私たちは後なのでは?」
「今日くらいは一緒でいいですよね?秋葉様」
「いつでも遠慮しなくてもいいわよ。ところでこれは何かしら?琥珀」
「それですか?秋葉様知らないんですかー?」
「知らないから聞いてるんじゃない」
「それは恵方巻と言って、何か関西の方で始まった風習らしいです」
「それで?」
「それでですね、恵方を向いてその太巻きを想いを籠めて無言で一本食べきると良いそうです」
「ふーん、それでこの4本を一人1本ずつね」
「はい。1つ1つ味が違いますから好きなのを取ってください」
「兄さん、まず選んでもらえないかしら」
「琥珀さん、これってどれが何味?」
「えっとですね…これが関西風で、こっちが関東風で、それが海鮮巻きで、残った一つは…フフフ、秘密です」
「じゃあその秘密のを貰おうかな」
「はい、志貴さん」
「ありがとう、琥珀さん」
「秋葉様はどうされますか?」
「私はそうね…関東風を貰えるかしら?」
「関東風ですね?はい、秋葉様」
「姉さん、私は最後でいいですから…」
「それじゃあお姉ちゃんは関西風を貰っちゃおうかしら」
「じゃあ私を海鮮巻です」
「それで琥珀、恵方は?」
「今年は丙の年ですから165度の方角です。南南東なのでえっと…」
方位磁針を出した琥珀。
「北がこっちになるようにして…あ、ちょうどそっち側ですね」
「それじゃあ食べましょう。あの馬鹿連中が来そうな気がするのよ」
「おい秋葉、言葉が悪いぞ」
「いいじゃない兄さん。ほら、無言ですから」
「分かったよ」
もぐもぐ…
4人が一斉に無言で食べ始めた。
無事に4人とも食べ終わり…
「ところで琥珀さん、あの堅かったのって何?」
「ああ、アレですね。志貴さんが食べたのは実は新潟風なんです」
「新潟風?」
「新潟は太巻きになぜか胡桃が入るんです。それの歯触りじゃないですか?」
「言われてみればそうかあ…」
そこに…
「ヤッホー志貴、あれー?もうご飯終わっちゃってるのー?」
「このアーパー吸血鬼。ようもづかづかと人の家に上がり込んで…」
「もう遠野君、ご飯なら私の家で食べさせるって言ったじゃないですか」
「貴女も人の家に勝手に入ってこないでくれませんかしら?」
「まあいいじゃないですか、秋葉様。まだありますからどうぞ」
「あら気が利くじゃない」
「そうですね、折角ですので戴きましょう」
「琥珀、勝手に何してるのかしら?」
「まあまあ秋葉様、じきに分かりますから」
「え?」
カプッ ガブッ
二人が太巻きに齧り付いた直後…
「…か、辛ーーーーーーーーっ!?!?」
「…に、苦いですっっっっっっ!?!?」
「人の家に勝手に上がり込んじゃメッですよ、二人とも」
「琥珀…何をしたの?」
「えっとですね、アルクェイドさんのには卵焼きの代わりにカラシを固めた特製の棒を入れちゃいました」
「それであっちは?」
「シエルさんの方にはキュウリの代わりにゴーヤを入れておきました」
「どうりで琥珀がそうしたのね」
「琥珀っ!水!水!」
「琥珀さん、お願いですから早く!」
「水ですか?じゃあ…」
ピッ
琥珀が何やらボタンを押すと…
パカッ
ちょうど二人が乗っている所の床だけが開いた。
ヒューーーー バシャンッ ボチャンッ
どうやら地下の水槽か何かに落とされたようだ。
「いくらでも飲んでいいですからねー」
ピッ
バタンッ
ボタンで床が元に戻った。
「まああの連中には良い薬ね」
「さて、秋葉様はそろそろお風呂に入られますか?」
「そうね。琥珀、準備をお願いできるかしら」
「はいー。翡翠ちゃん、後片付けは任せたわね」
「分かりました姉さん」
「琥珀さん、今日ちょっと時間ある?」
「何ですか?志貴さん」
「あの、生物の課題で少し教えてもらえたらって」
「生物ですかー?あ、私の分かる範囲だったらいいですよ」
「うん。じゃあ俺がお風呂上がったら琥珀さんの部屋に行くからさ」
「はいー、お待ちしてますねー」
「ところで琥珀さん、あの二人はどうするの?」
「んー、しばらくしたら屋敷の外に続く出口を見つけて出ていくでしょう」
「そっか、それならまあ…いいや」
「フフフ、心配しなくても大丈夫ですから」
結局地下に落とされた二人が屋敷を脱出できたのは日が変わる頃だったというのはまた別の話である…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
3年ぶりですか…観飛です。
そろそろ6本目を書こうかなキャンペーン(苦笑)第2弾です。
同日出しのもう1本が豆まきでシリアス風味に対してこちらは恵方巻でギャグ風味。
あ、今日ちゃんと食べましたよ。もちろんくるみ入りのですよ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2011・02・03THU
観飛都古