Heart and Soul(心の拠り所)
春のとある日のこと…
「祐一さん、今日は時間ありますか?」
「ありますけど…どうしたんですか?秋子さん」
「ちょっと買い物に付き合ってくれませんか?」
「俺がですか?いいですけど…名雪じゃダメなんですか?」
「ちょっと…ね」
「その言葉からして、俺じゃなきゃダメなんですね」
「そうなの、いいです…ね?」
と、右手に蛍光色のジャムを持ちながら語る秋子。
「分かりました、行きますからそれをしまって下さい」
「フフフ、今日は何も無いはずでしたね?」
「はい、確かに何も無いですよ」
「ちょっと遠くなるから、だから都合があると困るのよ」
「なるほど、ちょっと遠くと言うと…ああ、だいたい分かりました」
「確か、祐一さんも行きたがってましたよね?」
「はい。改装してから行ってなかったんで」
「私もちょうど休みですから、一緒にどうかと思って…ね」
ウィンクをしながら語る秋子。その姿に少しドキッとする祐一。
「で、でも秋子さん。それならみんなで行ってもいいんじゃないですか?」
「いいのよ、祐一さんの意見だけが聞きたいの」
「そ、そんな俺のだけって…」
「もう、恥ずかしいことをこれ以上言わせないで下さい」
「そこまで秋子さんが言うなら…分かりました」
「それにもう名雪と真琴ちゃん、それにあゆちゃんには書き置きを残してありますから」
「し、仕事早いですね」
「だって…祐一さんと二人きりになりたかったですから…」
「お、俺と!?」
その言葉に顔を紅くする祐一。
「そうですよ、たまには…いいですよね?」
「は、はい…で、でも俺となんですか」
「だって、男性は祐一さんしかいないじゃないでしょう」
「それはそうですけど、秋子さんくらいの人なら男性くらい…」
「そこは詮索しないのがお約束です、フフッ」
「えっと…」
「祐一さんはどれくらいで準備できますか?」
「え?あ、10分くらい待っててもらえますか?」
「いいですよ、そのくらいしたら出ましょう」
………
「いいですか?祐一さん」
「はい、秋子さんこそ大丈夫ですか?」
「私が誘ったんですから、もう」
「そうでしたね、じゃあ3人を起こさないように行っちゃいましょうか」
「そうですね、フフフ…これで二人きり…ですね」
「あ、秋子さん…」
「フフフ、冗談です」
「びっくりしましたよ、いや本当に」
「それは…どういう意味でです?」
「どういう意味って…女性としてその…」
「魅力的…ってことかしら?」
「そう…ですね」
「それなら天野さんから、祐一さんのこと奪ってしまおうかしら」
「ちょ、ちょっとそれは…」
「冗談よ、それじゃあ行きましょう」
二人は車で少し遠くのショッピングモールへと向かっていった。
「やっぱり広いですね、ここは」
「そうですね祐一さん。それなら迷子にならないように…」
ぎゅっ
秋子は祐一の腕を引き込んで腕組の形にした。
「ちょ、ちょっと秋子さんっ!?」
「フフ、どうしました?」
「だって変じゃないですか、親子というわけでもないのに…」
「たまにはいいでしょう、祐一さん」
「俺、恥ずかしいんですけど。だから外して欲…」
「却下(1秒)」
「…ですよね、やっぱり」
「祐一さん、私のこと嫌いなんですか?」
「そういうわけでは無いですってば」
「それなら…いいでしょう?」
「でも…どうしてなんですか?」
「好きですから、祐一さんのこと」
「…え?」
「あの人の面影に重なって…だから…」
「あの人って、その…」
「そうよ、名雪のお父さんね」
「伯父さんと俺、そんなに似てますか?」
「ううん、違う。何が似てるとかじゃないの」
「それじゃあどうして…」
「雰囲気が、暖かい雰囲気がそっくりなのよ」
「俺が…自分では分からないですけど、秋子さんが言うならそうかも知れないですね」
「だから、祐一さんと一緒に居たかったの」
「そういうことならもっと早く言って下さいよ」
「えっ…?」
「秋子さんも俺の大切な人なんですから」
「祐一さん…」
「それくらいのお願い、聞かないと罰が当たりますよ」
「ありがとう祐一さん、元はと言えば私の我が侭なのに」
「お礼なんていいですよ、こっちはいつもお世話になってるんですから」
「本当に優しいのね、祐一さんって」
「そう…なんですかね」
「皆さんが祐一さんに惹かれるの、少し分かりました」
「それは天野にもよく言われます、少し嫉妬するって」
「周りにこんなに女性が居ますからね」
「俺、みんなに優しくし過ぎてますかね」
「そんなことないです、その優しさが祐一さんの魅力です」
「そう言われると何だか安心しますよ」
「あの…今日だけは、いいですか?」
「いいですよ、こんな俺で良かったら」
「今日は…楽しみましょう」
二人の仲睦まじい買い物はしばらく続いたのであった…
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あとがき
観飛です。
kanonからついに秋子さんの登場です。
keyとLeafも独立させることを目標とするので、これからも書こうかなと思っています。
…秋子さん、意外と難しかったです。
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2008・04・11FRI
観飛都古