Pulsebeat(気持ちの表れ)

ここはある朝の藤田家…
「ふあーあ…ったく、今週もまた始まるのかよ…」
浩之はいつもより少し早く目が覚めてしまったようだ。
「あー、とりあえず飯でも食っておくか」
階段を下りてリビングに向かうと…
「ん?何か挟まってるな…」
郵便受けに何やら挟まっているのを見つけた。
「何だこれ?」
縦横がちょうど昔のシングルCDくらいのサイズの箱が挟まっていた。
バシャンッ
郵便受けから引き抜くと、その箱には1枚のカードとともに挟まっていたようだ。
「誰だろ…あー、そういうことか…」
カードのメッセージと送り主を見て箱の大きさと中身を理解したようだ。
「ま、これも一緒に食うか。新聞配達のついでに持ってきてくれたんだな」
浩之は少し微笑んで、台所へと向かっていった。
 
準備も整えて家を出るとそこには…
「おはよう藤田くん」
「おはよう理緒ちゃん。今日は朝からありがとうな」
ガチャンっ
家の鍵を閉めながらそう答えた。
「え?あ、うん…でもゴメンね、あんなのしか贈れなかったから…」
「そんなの関係無いだろ。気持ちさえ入っていればいいんだぞ」
「でも…本当はもっと良いのを贈りたかったなぁ」
「無理しなくたっていいぞ。ようは贈りたいと思う心じゃないのか?」
「そうなのかな…うん、ありがとう藤田くん」
「ま、今日の朝ごはんと一緒に食べさせてもらったからな」
「そうなんだ…じゃあ今日一番最初のチョコ…だね?」
「そうなるか…まあでも学校で何か嫌な予感はするぜ」
「藤田くんってモテモテだもんね」
「あ、でもな…」
「でも?」
「俺は理緒ちゃん以外のチョコは義理でしか受け取らないからさ」
「…ありがとう…でいいのかな?」
「でも今日がそんな日だなんてすっかり忘れてたぜ」
「藤田くんってそういうの気にしないよね」
「毎日同じような一日だからな」
「だけどあと一年だよ」
「そうだな…今年の修学旅行が過ぎたらあっという間だろうなー」
「私、修学旅行はたぶん…」
「そうか…ゴメンっ」
「藤田くんが謝ることないよ。私の家の事情だから…」
「俺に何とかすることができたらなあ…」
「こればかりはしょうがないもん。藤田くんが無理することなんてないってばぁ」
「だけどそうか、あとどのイベントも1回ずつか…」
「うん…」
「もうこの4月から3年だもんなあ…」
「一緒にいられるのも1年くらいなんだね」
「え?何だよ、卒業したら俺たち別れるのか?」
「だって藤田くんとは住む世界が違う気がするし…」
「理緒ちゃんが気にするな。言っただろ?大学卒業したら迎えてやるからって」
「…うん」
「だからな…って、ん?」
「どうしたの?藤田くん」
「周りの視線が殆どこっちに来てないか?」
「うー…ホントだぁ…」
既に二人にはすっかり周りの視線が注がれていたのである。
「何だか…恥ずかしいね」
「…ったく、言ってくれよ。そこにいるのは分かってるんだぞ雅史」
「あ、やっぱりバレてた?」
「いつから俺たちにこうだったんだ?」
「『あと一年』って聞こえてた頃だよ」
「さっさと教えてくれよ…」
「良い雰囲気作ってたのはそっちじゃんか」
「そうネ、ヒロユキとリオがソレだから近付けなかったデス」
「レミィもいたのか、おはようレミィ」
「Oh!グッモーニン、ヒロユキ、リオ」
「おはよう、レミィさん」
「そっちも今日は一緒に登校か」
「昨日からハムスターの飼育のことでこっちに泊まり込みでさあ」
「…苦労してんだな」
「僕は別に良いんだけどさ。そっちは?」
「ん?俺ん家から一緒に来ただけだぞ」
「藤田くん、今日は遅れなかったね」
「まあな。理緒ちゃんのチョコで目が覚めたからな」
「本当に…」
「Oh!忘れてマシタ。マサシ、チョコは帰りに渡すからネ」
「うん。帰りに家に寄っていく時でいいや」
「帰りは…そうネ、ハムスターを連れて帰らなくちゃデシタ」
「ま、奴らは放っておいて先に行くか理緒ちゃん」
「そうだね、先に行っちゃおっか」
「あ、そうだ。今日はバイトあるか?」
「バイト?えっと…あ、夕方の終わっちゃえば無いけど…どうしたの?」
「俺の家に来てくれないか?たまには理緒ちゃんの手料理を食べたいからさ」
「私の手料理で良かったら、うん」
「いいぞ。弟たちも連れてきていいからな」
「ありがとう、藤田くん。今月ちょっとピンチになりそうだったんだあ」
「さっきの話を聞いてると、チョコでもお金が厳しそうだったからさ」
「ゴメンね。そういうつもりじゃなかったんだけど…」
「いいってことだ。俺は最近料理らしい料理食べてないからな」
「それじゃあ6時にスーパーで待っててくれるかな?」
「分かった。6時にスーパーの前で待ってるな」
「あと…ご飯って炊いておいてもらえる?」
「それくらいなら任せておけ」
「藤田くんが好きな物作るから、楽しみにしてて」
理緒は最高の笑顔で浩之にそう応えた…
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あとがき
観飛です。
Leaf系SS6本目はクロスオーバーでは出していましたがToHeart理緒です。
何だかバレンタイン絡みで書きたかったのがありまして…。
それにしてもこのジャンルもしばらくぶりですか…反省しないとですね。
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2011・02・14MON
観飛都古
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