A Tiny florid Mind(桜色の小さな心)

「どうして振り向いてくれないんだろう…」
部屋で想い悩む少女が一人。
「こうなったら実力行使するしかないかなあ…でも…」
周囲の人物を思い浮かべると…
「でも、今の私じゃ勝てないもん…けど…」
スタッ
立ち上がる齢10歳ほどの少女。服はどこか中国風である。
「よしっ、こうなったら意地でも行ってみよっ!やってみなきゃ分からないもん」
その少女は決意を秘めた表情で愛しの人が住むお屋敷へと向かって行った。
 
「うう…いつ見ても大きいなあ」
お屋敷の大きさに少し身震いする都古。
「で、でも今日こそお兄ちゃんを振り向かせるって決めたんだもん!」
都古は少し震える手で呼び鈴を押した。
DING DONG♪
「あらぁ?こんなに朝早くどなたでしょう?は〜いっ」
門を開けるこのお屋敷のメイドの琥珀。
「あらっ、おはようございます都古さん。どうされたんですか?こんな朝早くなんて」
「あ、お、おはようございますっ。その…えっと…」
「んー、都古さん…ここで話しにくいことでしたら、お屋敷に入られてからでどうです?」
「えっ、いいんですか?」
「はい〜、せっかくですから。それに…」
「それに?」
「今日は秋葉様は居られませんよ」
「ほ、本当ですかっ!?」
「はいー、グループ企業のお話し合いで出掛けられてますから」
「良かったぁ、これでライバルが一…ううん、何でもないですっ」
「フフフッ、そういうことですかあ…ま、まずは屋敷にお入り下さいな」
「え…えっと、はい…(や、やばっ…バレちゃった…)」
二人はお屋敷へと入っていった。
 
「あれっ?都古ちゃん、どうしたんだ?」
「お兄ちゃんっ!」
ぎゅうっ
お屋敷に入るなり志貴の姿を見つけた都古は、その胸へと飛びついた。
「うわあっ!?」
「あらあら〜、やっぱり相当逢いたかったんですね、都古さん」
「うう…琥珀お姉ちゃん…」
「志貴様、おはようございます…え?都古様?」
「あう…おはようございます…翡翠お姉ちゃん(やっぱり苦手かも…)」
「姉さん、都古様はどのような用事で?」
「んー、詳しくは聞いてないんですけどねー」
「そういえば今日はどうしたの?都古ちゃん」
「あの…えっと…」
「志貴さん、ちょっといいですか?」
「何ですか?琥珀さん…うん…えっ?…はあ…なるほど」
志貴へと何やら耳打ちをする、何だかんだで分かっていた琥珀。
「よし、分かった。翡翠、出掛けたいんだけど準備お願いできる?」
「分かりました、志貴様。何時頃に出られる予定でしょうか?」
「都古ちゃんしだいかな、いつにしようか?」
「えっ?えっ…えーっ!?い、いいの?お兄ちゃん」
「今日は秋葉の目も無いしさ、俺は別に何も無いし構わないよ」
「ありがとうお兄ちゃんっ!それにお姉ちゃんっ!」
「フフフッ。志貴さん、都古さんのこと、しっかりエスコートしてあげて下さいね」
「うん、せっかくだしね」
「お兄ちゃん、今日はよろしくねっ」
「うん、何時に出ようか?」
「うーん、どうしよう…」
「そうだな、9時半くらいにしようか」
「そうだねっ、それまでお兄ちゃんの部屋に居てもいい?」
「いいけど…つまらないと思うし、俺はこれからご飯なんだけど…」
「いいなあ…ご飯かあ…」
「ん?食べてないの?」
「食べてきたけど、そんなに食べてこなかったから」
「それじゃあ一緒に食べようか」
「いいの?お兄ちゃん」
「琥珀さん、大丈夫ですか?」
「んー、たぶん大丈夫だと思いますよー」
「それなら二人分で用意してくれるかな?」
「分かりましたぁ」
………
「それじゃあ行ってきますね」
「お兄ちゃんお借りしちゃいまーす」
「行ってらっしゃいませ」 「行ってらっしゃい」
琥珀と翡翠の二人に見送られて玄関を出た二人。
「でも、突然来るなんてびっくりしたよ」
「だって、こうしないとお兄ちゃんの周りにいっぱい来るんだもん」
「確かになあ、アルクエイドやら先輩やら秋葉やら居るからなあ」
「今日は私と一緒なんだよね?」
「もちろんだよ、誰にも邪魔はさせないつもりだから」
「ヤッホー!志…」
ドカッ
突然来たアルクエイドをパンチで一閃する志貴。
「あ…あう…」
「いいのいいの、約束もせずにのこのこ来る方も来る方なんだから」
「それじゃあ私だって…」
「いいんだって、何も約束はしなかったけどさこういうのは先着順だよ」
「遠野クンどうし…」
ガンッ
シエル先輩もその表情を変えずいなす志貴。
「今日は二人で楽しもうよ、久しぶりにさ」
「うんっ」
「だって、都古ちゃんとはずっとこういう機会も無かったしね」
「あ…あの、お兄ちゃん」
「ん?どうしたの?」
「今日だけ、今日だけでいいから」
都古は志貴を見つめて…
「私のこと、『都古』って呼んで欲しいな」
「え、でも…分かったよ、都古」
その言葉に満面の笑みで答えた都古であった…
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あとがき
各会社ごとに独立するための努力、観飛です。
こうして月姫関連のSSを書くのも半年以上振りですか…
都古ちゃんだって女の子ですもん、こんな風に書いてみたくもなります。
なお、作品には出てこないのにタイトルにある「桜」は、伊勢大輔の短歌からの連想ですよ。
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2008・03・29SAT
観飛都古
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