Feather Stiffener(羽の芯)

夏のある日のこと…
「あー、秋葉ちゃんのお兄さんだ」
「え?うわあっ!三澤さん、だよね?」
「?どうしたの?そんなに驚くなんて思わなかったよ」
「いや、こんな所で会うなんて思わなかったしさ」
「でもここってそんなに不思議な場所かなあ?」
「え?だってここは紳士服売り場だよ」
「あー、ほんとだ。あれ?婦人服売り場はこの階じゃなかったの?」
「あれ?もしかして改装してからはここには来てないの?」
「えー、改装しちゃったんだ。それで何階になったんだろ?」
「確か1つ下だったと思うけど…」
「んー…お兄さん、案内して欲しいなあ」
「ええっ!?お…俺が?」
「そんなに驚くこと無いってばあ、言ってみただけなのに」
「いや、秋葉に見られたら…さすがにヤバイしさ」
「それなら大丈夫だよー。今日は絶対に来れないからねー」
「え?あっちで何かあるの?」
「うん、秋葉ちゃんと晶ちゃんがそれに付きっきりになっちゃって、私はそれで追い出されちゃったんだ」
「その二人ってことは…生徒会関係かな?」
「そうみたいだよ…『羽ピンが居ると作業にならない』からって…ひどいよねー」
「う…うん。それじゃあ今日の買い物って、ただの暇つぶしなの?」
「んー、それもあるけど確かに買い物したい物あったからね」
「あ、そうだ。あのさ、三澤さん」
「どうしたの?お兄さん」
「俺の買い物が終わってからでも構わないかな?案内するの」
「うん、ふふふふふ」
「…え?その笑いって…?」
「なんでもないよー、うん。ほら早く行こうねー」
「え?あ、うん」
………
「うわあっ、お兄さん。こんなのダメだよ」
「そうかな?似合ってないかな?」
「うーん、ちょっと。こっちの色の方が似合うと思うけどなあ」
「三澤さんがそう言うなら、そうしようかな」
「でも、私の意見で決めちゃっていいの?」
「人の意見っていうのも参考にしたかったしさ、ちょうど良かったよ」
「…本当はお兄さんにはビキニパンツをはいて欲しかったけど…」
「ん?何か言った?三澤さん」
「んーん、何でもないよー」
「それじゃあ買ってくるから待っててね」
「うん」
………
「さっきの笑いって、やっぱり…」
「そうだよー、もちろんねー」
そう、ここは女性下着売り場。その入口に志貴も居た。
「普通の服も欲しかったんだけどねー、でもこっちの方が必要だったから」
「秋葉を連れてきたら殺されてたかもな」
「言われてみればそうだよねー」
「でも、そんなにいるもんなの?これって」
「ううん、今回は本当に必要だっただけだもん」
「早く行ってきてよ、さすがに恥ずかしいからさ」
「…お兄さん」
「え?」
「せっかくここまで一緒に来たのになあ」
「えっと、つまりそれは…」
「あとで秋葉ちゃんに言っちゃうよー。『秋葉ちゃんのお兄ちゃんはこんなに酷い人』だったって」
「俺…殺されかねないな…」
「だよねー。でもさっきの言葉だと、一緒に行ってはくれないんだよね」
「何か他の目的でも?」
「ううん、だってお兄さんと一緒だと楽しいからねー」
「ま、いいか。で、どんなのを買うつもりなの?」
「んー、お兄さんはどんなのが好みなの?」
「俺の好みを聞いたってしょうがないんじゃないの?」
「そんなことないよー。お兄さんと同じで男の人ってどんなのが好きか聞いてみたかったし」
「だからって俺が選んだのでいいの?」
「いいんだよー、だってお兄さんのこと好きだもん」
「………えっ!?」
「え?私何か変なこと言ったかなあ?」
「いや、今好きだって」
「うん、あれ?あ…言っちゃったんだ、私」
「言っちゃったって…それは本気なの?」
「本気じゃなくっちゃ言うわけないよ、私だって」
「それならいいかな、うん」
「えっ…?」
「いいよ、三澤さんがそこまで本気ならさ」
「い……いいの?」
少し顔を紅くする羽居。
「だって三澤さんの『好き』に嘘は無いって思えたから…」
「でもお兄さん、恋人は居なかったの?」
「え?俺、いつそんなこと言ったっけ?好きな人が居るとも言って無かったと思うけど…」
「あ…あれ?」
「それに俺、いつ三澤さんが嫌いだなんて言った?」
「つまり…その…」
「好きだよ、だってそこまで真剣に想ってくれてるんだからさ」
「お…お兄さん…」
ぎゅうっ
少し気恥ずかしくなったのか志貴へと抱きつく羽居。
「うーん、でもそのお兄さんって言い方はなあ…ちょっと恥ずかしいし…」
「それじゃあどうしようかなあ…」
「せめて苗字か名前で呼んでくれないかな?」
「それなら志貴さんでいいよね?」
「あ?え、うん。それで構わないよ、三澤さん」
「あー、志貴さんもそれは他人行儀すぎるよ」
「そっかなあ、じゃあ三澤ちゃん…いや、羽居ちゃんの方がいい?」
「うーん、羽居ちゃんの方が好きかなあ、うん」
「それじゃ、羽居ちゃんって呼ぶことにするよ」
「うん。じゃあお買い物の続きだね、志貴さん」
「そういえばそうだったか…」
「それで、どんなのがいいかな?」
「羽居ちゃんに似合いそうなのか…柔らかそうなやつの方が似合いそうかな」
「やっぱりそうかなあ…こんなの?」
「そうそう、柔らかそう感じが可愛い羽居ちゃんには似合ってると思うよ」
「これの色違いもあるけど、何色が好き?」
「んー、白っぽいピンク色かなあ…」
「えーと…うん、サイズも合うやつがあったあった」
「うん、そんな感じ。可愛くていいと思うよ」
「えっと…初めてのときは…これにしようかな…」
「…う…うん」
「覚えててね、志貴さん」
「うん、分かったよ羽居ちゃん」
「それじゃあ買ってくるね」
「うん、これ終わったらどっか食べにでも行こうよ」
「分かったあ、待っててね」
後で秋葉から聞いた話では、その日を境に羽居は今までよりさらに女の子っぽくなっていったという…
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あとがき
久しぶり、でも一挙掲載な観飛です。
まず1本目は歌月十夜から羽居さんです、イメージとしては前作のよっちと似通ってます。
この今日掲載する4作、実はバイト中に執筆してました。
あ、そうそう。これは予定してた羽居SSではありません。そっちは…もう少しお待ちください。
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2007・08・26SUN
観飛都古
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