Love Coloristic Crystal(恋色の水晶)

春も桜が散り、新緑が目に映える季節の事…
「志貴さんどうしたんですか?何だか元気良くなく見えますよ」
「ん?晶ちゃんか、別に何でもないよ…ってどうして晶ちゃんが!?」
「今日は遠野先輩に呼ばれて来たんです、でもその肝心の遠野先輩が居なくって…」
「あれ?秋葉は今日、遠野グループの話し合いがあるから、朝から居ないって聞いたけど」
「えぇっ!それじゃあどうしよう…私、明日まで帰らないって届けまで出して来ちゃったのに…」
「うーん、秋葉も今日は泊りがけって言ってたしなあ」
「それなら、志貴さんとご一緒にお出かけになられたらいかがですか?」
「琥珀さん…俺は別にかまわないけど…」
「いいんですか?琥珀さん」
「はいー、翡翠ちゃんにとっても私にとってもそれならいい休息になりますから」
「それなら、志貴さんをお借りしちゃいますね」
「何だ、晶ちゃんも随分と乗り気だったんだ、それならいいかな」
「ほら早く行きましょ志貴さん、遅くならないうちに」
「ちょっと待ってよ晶ちゃん、俺まだ準備できてないんだからさ」
「あ、そうでした。すみません…」
「琥珀さん悪いんだけどさ、出かけられる用意してくれないかな?」
「あ、はいー。翡翠ちゃんにすぐに持ってこさせますね」
 
数分後…
「志貴さま、これでよろしいでしょうか?」
「うん、ありがとう翡翠。これで全部…だな」
「それでは、お気をつけて行ってらっしゃいませ、志貴さま」
「行ってくるよ、翡翠。それじゃあ行こう、晶ちゃん」
「はい、志貴さん」
二人はそのまま屋敷を後にした。
………
「それで晶ちゃんはどこか行きたい所はあるの?」
「そうですね、志貴さんはどこかありますか?」
「俺は特には無いんだけどな、激しく動かなければどこでも構わないさ」
「そうですね…あ、志貴さん。ちょっとハードになるかもしれないですけど良いですか?」
「晶ちゃんがしっかりとサポートしてくれるなら構わないよ」
「それなら特攻しちゃいましょ。しっかりつかまっててくださいね」
「えっ!?」
ぎゅっ びゅうんっ
晶は志貴の手を握り、駅へと向かって引っ張っていった。
 
「…あのさ、この電車に乗っているってことはもしかして…」
「はいっ、もちろん私が行きたい場所です」
「そういえば、晶ちゃんって同人誌を書いてたんだっけ」
「あ、はい。志貴さんには見せられませんけど…」
「そうなの?結構人気があるって羽居さんから聞いたんだけどなあ」
「あう…聞いちゃったんですか?志貴さん…」
「詳しい内容は聞いてないけどね、秋葉は『何が面白いんだか』とか言ってたけどね」
「確かに、遠野先輩からは色々言われちゃってます。でも好きなことですから」
「何となく分かったような分からないような…だけどまあいいや」
「はい、そうしてくれるとありがたいです…」
「うん、分かったよ」
「あ、もうすぐ着きますね。降りたらまた引っ張りますね」
「え、引っ張るって…さっきみたいに?」
「そうです、だってはぐれたら二度と会えなくなるかもしれませんよ」
「う、うん。分かったけど、引っ張るのはやめてくれるかな。手を繋ぐって形ならまだいいけどさ」
「え…あ、い、いいんですか?志貴さん」
さっきとは打って変わって顔を紅く染めた晶。
「はぐれるよりはマシでしょ、恥ずかしがっててもしょうがないからね」
「あう…は、はい。じゃあお言葉に甘えさせてもらいますね」
「それじゃあ、道案内はまかせたよ」
「はいっ」
晶の顔はすでに生き生きとし始めていたという…
 
そして2時間後…
「晶ちゃん、よく体力が持つね…俺もうクタクタだよ…」
「志貴さんもう疲れちゃったんですか?うーん、でもこの時間だとこの辺は混んでるし…」
時計の針は12の時、ちょうど休日の昼時にこの界隈で空いている店を探す方が難しい。
「志貴さん、まだ歩けますか?歩けるならちょっと遠いですが、ゆったりできる場所があるんですけど」
「そこで…構わないよ。とりあえず、一旦休みたいからさ」
「それじゃあ行きましょ、志貴さん」
「うん、そうだね」
二人はとある店を後にして、少し南の方へと歩き始めた。
………
ここは隣の駅の近くにある、とあるファーストフード店。
「志貴さんは何にします?」
「そうだなあ…こういうところに来るのも久しぶりだしな」
「それなら、これにしたらどうですか?」
「うん、晶ちゃんが薦めてくれるならそれにしてみるよ」
「私はこれで。あ、あとそれとは別にアイスコーヒーのLを一つお願いします」
………
「志貴さん、アイスコーヒーはブラックですか?」
「んー、ミルクだけは入れて欲しいかな。でもどうして別にこれ頼んだの?」
パコッ ぺチッ
晶はポーションを別に頼んだアイスコーヒーへと入れた。
「え、えぇっと志貴さん。一つお願いがあるんですけどいいですか?」
「ん?どうしたの?そんなにあらたまった顔をして」
「こ、これを一緒に飲みませんか?一つのコップで一緒に飲むのに、憧れていたんです」
「なるほどね、そういうことだったのか…。晶ちゃんがそこまで言うなら、ね」
「あ、ありがとうございます、志貴さん」
ポチャッ チャプッ
蓋が外されていたLのアイスコーヒーに刺さる2本のストロー…
チューーーーッ ツツツツツツツツ
そして徐々に減っていくアイスコーヒー…
「はあっ…何だかいつもより美味しく感じちゃいました」
「アハハ、そうだね晶ちゃん。何だかちょっと恥ずかしいけどさ」
「でも、本当にありがとうございます。あとは志貴さんが飲んじゃってください」
「いや、ここまできたら最後まで一緒に飲もうよ。晶ちゃんのお金なんだしさ」
「え、あ…はい」
そしてコーヒーも無くなり…
「これで満足です…志貴さん。ありがとうございました」
「んー、俺はまだちょっと満足じゃないかな」
「え…?それはどうい…むうっ」
チュウッ
その刹那、向かいの席に座っていた志貴の唇が晶の唇へと重なってきた。
「やっぱりちょっと苦いけど、でもこれで俺も満足だな」
「志貴さん…」
晶にとってこの日は特別な一日になったと、後々に志貴は秋葉からそう聞かされたという…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
再び月姫からになっちゃいました、観飛です。
晶ちゃんはこれまた初めてですね、割と自然に書けましたけど。
これの前半部は、東京旅行行き帰りのバスの中での執筆でした。
ああいう眠気があるときに限って、良い文章が書けるものなんですよね…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2006・05・10WED
観飛都古
短編小説に戻る