Cardiac Light(心の明かり)
それは春の温もりが少しずつ増していくGWの頃…
「む、あれはセンパイっすね」
タタタタタタ
「センパーイ!こんにちはっス!」
「うわあっ!?…って吉岡さんか」
「どうしたんですか?こんなところで」
「え?どうしたって…あんまり暇だから散歩がてら出てるだけだけど?」
「あれ?そういえばこのみは一緒じゃないんですか?」
「あー、誘おうとは思ったんだけどこっちの都合だしやめたんだ」
「でもセンパイだと他の子だっていっぱいいるような…」
「わー、そういうことはここでは言わないでよ」
「あははっ!センパイ、面白いっスよ」
「あははじゃないってば、まったく…」
「でも珍しいじゃないですか、センパイの周りに誰もいないなんて」
「そうかなあ…そういえば最近はタマ姉とかこのみとか、かもりんやらるーこやら…いるからなあ」
「センパイって何かフェロモンでも出てるんですか?」
「…そう言われると否定出来ない自分が悲しい…」
「もうハーレムっスね、羨ましいっスよ、このこのっ」
よっちは貴明の脇腹を小突いた。
「あまり嬉しくは無いんだけどな」
「えー?」
「そういえば吉岡さんこそどうしたの?山田さんは?」
「あー、今日は暇じゃないらしいっスよ」
「いつも二人だから珍しいなって」
「そういえばセンパイのところに行く時はいつもそうっスね」
「でも、お互い暇同士ってわけか…」
「まあそういうことっスね、センパイはこれからどっか行くっスか?」
「うーん、特に予定は無いしなあ…何せ暇つぶしだったし」
「それじゃああたしに付き合って欲しいんですけど、ダメっスか?」
「え?いいの?」
「構わないっスよ、センパイが恥ずかしくなければですけど」
「ん?どういうこと?」
「んー、それはあえて教えないっス。YESかNOかどっちっスか?」
「…ちょっと怖いけどYESにしておこうかな」
「ふふふ…本当っスね」
「…何か分かってきたような…」
「さあ、お店に行くっスよ」
………
「入ってもいいのかな?俺って…」
「んー、どうっスかね?たぶん大丈夫かと思うっスよ」
「でもここに来たっていうことは…」
「ちゃる達は少し連れて来辛かったっス、実は」
「…そうだろうね…」
「ほら、センパイ。あそこにも男の人がいるっスよ。だから大丈夫みたいっスね」
「本当だ、まあ相手の選ぶっていうのもあるしね」
「そうっスね…って、ん?」
「どうしたの?吉岡さん」
「何かずいぶんと自然に行こうとしてたっスけど…」
「それがどうかしたの?」
「あたし達、別にそんな関係でもないような…」
「でもここに連れてきたのは誰だったかな?」
「それはそうっすけど…」
「そうなるとここに俺を連れてきたのは…?」
「最初は別にセンパイなら構わないと思ったっスけど…」
「けど?」
「いざとなるとやっぱりこういうのって恥ずかしいっスね」
「なるほどな。でも何で俺なら良かったの?」
「深い意味は無かったっスけど…ところでセンパイ?」
「ん?」
チエは少し吹っ切れたようにこう言った。
「センパイは見たいっスか?あたしの下着」
「…えっ!?」
言った方も言われた方もすっかり顔を紅くしてしまった。
「もし見たいっていうなら、今日はセンパイ好みのを選ぶっスよ」
「ど、どうして…?」
「センパイの答え次第で答えるっスよ」
「吉岡さん、本当に…いいの?」
「センパイ、男らしく無いっスよ。女の子がこう言ってるんですから」
「じゃあうん、でもどうして?」
「ちなみに一つ聞くっスよ、センパイって今は恋人はいるっスか?」
「…いたら今日こんな暇はしてないだろうなあ…」
「…それならいいっス、うん。じゃあ行くっスよ」
「良く分かったような、分からないような…」
「センパイ、早く来るっスよ」
「わ、分かったよ。待ってってば」
………
「センパイってこんなのが好みだったんですね、意外だったっス」
「女の子は可愛いほうが良いなって思うし」
「でも、私に似合うっスかね?」
「たぶん似合うと思うよ、試着室で着けてみなよ」
「うん、そうするっス」
………
「センパイ、見るっスか?」
「えっ?」
「上だけっスけど、さっきのやつ着けてみたっすよ」
「…吉岡さんが良いって言うなら…」
そう言った次の瞬間…
シャッ シャッ
貴明は靴を持ちつつ、チエの居た試着室へと入った。
「ちょ、ちょっと吉岡さんゴメンっ!匿ってっ!」
「え?え?ええっ!?」
「事情は後で話すからっ」
と、そこに…
「あれえ?おかしいな、何かたかちゃんの声が聞こえたんだけどなあ…」
その店を見回す少女が一人居た。
「でも、あのたかちゃんが女性下着の店なんかに居るはずなんて…気のせいか」
その少女はそのまま何事もなかったように去っていった…
「セ、センパイ…」
「あ、す、すぐ出るよ」
「い、いえ違うっス」
「え?」
「あたしは別に構わないっス」
「どういう…?」
「センパイがこんな近くにいるって考えただけで…何だか今、ドキドキしてるっス」
「それは…恥ずかしいから?それとも…」
「センパイ、さっきした質問は覚えてるっスか?」
「さっきの質問って、あっ…」
………
『センパイって今は恋人はいるっスか?』
………
「あたしじゃ…ダメっスか?」
「…俺でいいの?」
その答えは、
チュッ
唇に返ってきた…
「吉岡さん…」
「センパイ、チエって呼んでっス」
「チエちゃん…」
チュッ
チエの唇に返ってくる温もり…
「センパイ…」
「センパイ…か」
「え?センパイは何て呼んで欲しいっスか?」
「そうだな…って、ちょっとここで話すのやめようよ。外で…ね」
「そ、それもそうっスね…」
………
「ありがとうございました」
「ふう、ちょっと恥ずかしかったっスね」
「まあ、男があんな試着室に入ることなんてないからな」
「でも…本当に今日は良かったっス」
「え?何が?」
「センパイに…あたしの想いを伝えられたっスから…」
「えっと…でも、本当に俺で良かったの?」
「センパイ以外好きになることなんて、本当に考えられないっス」
「そうなの?」
「男の人…今まで本当は苦手だったっス」
「そうなんだ…何だか意外だな」
「でもセンパイだけは違ったっスよ、ちゃる達と一緒にいたっていうのもあったっスけど」
「そうなの…かな?」
「だから…センパイが私の運命の人かなって思っちゃったっス」
「でも俺だって、女の子が苦手だったんだよなあ…」
「そうだったんですか?」
「うん。小牧さんとかタマ姉とかのおかげで多少は克服したけどさ」
「ちょっと意外だったっスね」
「そういえばチエちゃんといると落ち着く気がするよ、今まで気付かなかったけどさ」
「そうっスか?」
「何だろう、分かんないけど他のみんなには無い何かを持ってるんだなって」
「それは、今はセンパイの一番になれてるって受け取っていいっスね?」
「…うん」
「嬉しいっス!」
ぎゅうっ
チエは貴明の腕へと抱き付いた。すると紅潮していく貴明。
「チ…チエちゃん…」
「ん?何スか?」
「胸…大きいんだね、やっぱり」
「センパイは…小さい方が好きっスか?」
「いや、胸の大きさなんて関係ないと思うよ。その人の持っている物が大切だから」
「…センパイのそういうところ、好きっスよ」
「こういうところ?」
「そういう言葉とか性格…それが私も含めて女の子たちへフェロモンになってるっスよ」
「そうなのかな…?」
「…このみも言ってたっスけど、センパイってちょっと鈍感っスよね」
「何回も言われた気がするな、そういうことは」
「一つ一つの言葉があまりにも自然で、それが人を惹きつけてることに気付いてないっスからね」
「でもね、チエちゃん」
「ん?何スか?」
「それに気付かせてくれたのは、他ならぬチエちゃんだよ」
「センパイ…」
………
「そういえば、あたしはセンパイのことを何て呼べばいいっスか?」
「そうだな…できれば………で、ダメかな?」
「センパイがそれでいいなら構わないっスよ。じゃあ…」
そして一言…
「貴明クン…」
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あとがき
先週は久しぶりかと思いきや2週連続のSS、観飛です。
私の中ではToHeart2一番のキャラである、よっちをフィーチャーしてみました。
これも前半は授業中に書いていたのですが筆が進むこと進むこと。
あ、そうそう。予定してました羽居SSはクロスオーバーの方に回ります、あしからず。
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2007・07・15SUN
観飛都古