In Autumnal Sunshine(秋の日差しの中で)

ある秋の日のこと…
「なあ、綾香」
「何?浩之」
「負けたんだから、何でも聞く約束だよな」
「確かに負けたからしょうがないわね」
「まあ確かにお前も一端のお嬢様だからな、こういうゲーム系は慣れてないと思ったからな」
「卑怯よね…まったく」
「卑怯とは心外だな、作戦勝ちと言ってくれよ」
「まあ負けは負け。で、私は何をすればいいわけ?」
「そうだな…明日は暇なのか?」
「明日?そうね…まあ構わないわよ」
「そうか。ならデートでもするか?」
「……デ、デート!?」
「何だ?そんな驚くことか?」
「驚くに決まってるじゃない!そんないきなり言うなんて」
「で、いいのか?ダメなら別のことにするけど」
「…アンタがそれで良いって言うならいいわよ」
「じゃ、待ち合わせ場所はそっちで決めてくれよ」
「それなら……○○駅南口の噴水の前でいいわね?」
「ああ、構わない。時間は10時でいいか?」
「たぶん大丈夫だと思うけど…今日の夜にでも連絡するわ」
「分かった。じゃあ連絡頼むな」
………
Trrrrr… Trrrrr…
カチャッ
「もしもし、浩之?」
「ああ、綾香か?」
「ゴメン浩之、明日30分くらい遅らせてもらっていいかしら?」
「どうしたんだ?」
「ちょっと準備しなくちゃいけないのよ。いいわよね?」
「俺は別に構わないぞ」
「良かった…じゃあ10時半に南口の噴水ね」
「ああ、必ず来いよ」
「分かってるわよ」
カチャッ
 
翌日…
「やっぱり来るのが早すぎたか?」
時刻は10時15分、南口の噴水の前に浩之が居た。
「まあ待つか、こればかりはしょうがないからな」
10分後…
タッタッタッ
何やら浩之の許へと向かってくる足音が…
「ゴメーン浩之、待った?」
ドンッ
「くっ…不意打ちはやめてくれよ」
綾香の右ストレートをガードする浩之
「随分鍛えられてるわね、葵の影響かしら?」
「いいや、何でここで葵の話が出てくるんだよ」
「だって葵のスパーリングにも付き合ってたんでしょ?」
「まあ少しは手伝い程度にな。でもほとんどはお前の影響だぞ」
「わ、私!?」
「お前に付き合うようになってから、鍛えないと拙くなったからな」
「そういうことだったのね」
「…ったく、そろそろ行くぞ」
「まずはどこに連れてってくれるのかしら?」
「ああ、まずは映画に行くつもりなんだけどいいか?」
「いいわよ、でもつまらない映画だったらしばくわよ」
「物騒なこと言うなよ…ったく、まあいいか。行くぞ」
ぎゅぅっ
「浩之っ!?」
突然握られた手に、思わず顔を紅らめる綾香。
「どうした?急がないと始まっちゃうんだから急ぐぞ」
「わ、分かってるわよ」
………
シネマコンプレックスにて…
「これ…見るの…?」
「何だよ、苦手なのか?」
「いいじゃない、私にだって苦手な物くらいあるわよ」
「じゃあやめるか?」
「えっ…?」
「そんな綾香が嫌な物、見せたくはないからな」
「そんなの気にしなくてもいいのに…」
「今日は一応デートなんだから、嫌がることはさせたくはないからな」
「(浩之…こういう所にみんな惹かれたのね…)」
「それじゃあ…30分後のあれにするか?」
「…浩之はどうなのよ」
「俺が薦めてるんだから、悪いなんて言うわけないだろ?」
「そ、そっか…」
「これでいいかは綾香の気持ち次第だけど…」
「ええ、私もこれでいいわよ」
「よし、じゃあこれにするか」
………
映画を見終わり、近くの喫茶店にて…
「良かったわね…」
「ああ。久々にこういう映画見たけど、ストーリーがしっかりしていて良かったな」
「浩之はストーリーなの?私は俳優の演技なんだけど」
「確かにな。あの映画だと演技がしっかりしてないとストーリーに負けるからな」
「そうよね…でもちょっと恥ずかしかったわね」
「そうだな…周りも全部カップルだもんな」
「恋愛映画だったから、しょうがないと言えばそれまでだけどねえ」
「みんなベタベタしてて、こっちが見てて恥ずかしかったな」
「そうね…」
「まったく…」
「な、何よ?浩之」
「いや…そっちこそ何だよ?綾香」
「キス…してみる?」
「いいのか?綾香」
「ああっ、もうまどろっこしいわね」
その刹那…
チュッ
綾香の唇が浩之へと重ねられた。
「私のファーストキスなんだからね」
「…俺だってそうだぞ」
「えっ…本当に?」
「ああ、こんな形で奪われるとは思ってもなかったがな」
「ゴメンっ!本当に」
「いや、いいよ。お前のこと嫌いじゃないし…むしろ好きだからな」
「浩之…私も好きよ」
「何だよ…無理して言わなくてもいいんだぞ」
「無理なんて言ってないわよ、好き」
「綾香…」
「もう…男がそんなんでどうするのよ」
「そ、そうだな。よし、じゃあこれ飲んだらどこかに向かうとするか?」
「そうね、行きましょ」
少し秋めいた風の吹く中、二人の手はしっかりと握られていた…
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あとがき
観飛です。
Leaf系SSの4本目はToHeartから。ちなみにこれ、サイト7周年記念SSです。
綾香は書いてみたいと思ったSSだったのですよ実は。理緒と迷いましたが。
綾香も一人の女の子ですもん。
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2008・09・03WED
観飛都古
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