#073〜煙〜
ここはあずさの住むマンション…
「ふんふふ〜ん♪」
何やら上機嫌なあずさがいた。
「これはこっちに置いて…あとこれはそっちに入れておきましょう」
どうやら誰かを呼ぶようだ。
ピピピッ♪ ピピピッ♪
「あら、できたみたいだわ〜」
パタパタパタパタ
スリッパを鳴らして台所に向かった。
パカッ
オーブンレンジを開けたあずさ。
「フフフ、美味しそうに出来たわね」
そのレンジの中身を見て思わず笑顔が零れた。
「あ、そうだわ」
ポンっ
何かを思い出したように思わず手を叩いた。
「プロデューサーさんが来るなら、アレを炊いちゃおうかしら」
あずさはリビングの棚からある物を出した。
「これを挿して…マッチで火を点けて…」
ポッ スゥっ
線香型のお香に火を点けてリビングの机の上に置いた。
「んー、良い薫り…」
細い煙がたなびき始め、優しい薫りが部屋を包み始めた。
「あとは…もう大丈夫かしら」
そこに…
DING DONG♪
「はーい。来たわね、プロデューサーさん」
パタパタパタパタ
スリッパでも足早になるのが分かる。
ピッ
玄関にあるインターホンを押した。
「こんにちはー、どちらさまでしょうかー?」
『あずささん、俺です。ちょっと早いですけど着いちゃったんで』
「はいー、今開けますから〜」
カチャッ
あずさは玄関のカギを開けた。
ガチャッ
ドアが開くとそこには…
「こんにちは、あずささん」
「いらっしゃいませ、プロデューサーさん。さあ中に入って下さい」
「はい。ではお邪魔します」
バタンっ カチャッ
あずさとプロデューサーは家の中へと入っていった。
ここはダイニング。プロデューサーはすっかりくつろいで座っている。
「プロデューサーさん、お腹は空いてますよね?」
「はい。もうここに来るまでお腹空き過ぎてどうしようかと思ったくらいですよ」
「フフフ、今日はプロデューサーさんのために、一番の得意料理を用意しちゃいました」
「それは楽しみです」
「今持ってきますから待ってて下さいね〜」
パタパタパタパタ
あずさは台所のレンジへとそれを取りに向かった。
「さすがはあずささんらしい感じのする空間だな…」
プロデューサーはふと部屋を見回して一言そう呟いた。
「それに何かこう…薫りが良いって言うか…かな」
「お待たせしましたー。私の一番の得意料理です〜」
その料理を二人分持って戻ってきた。
トンっ トンっ
あずさはそれを置きつつ自分も席に着いた。
「うわあ、これは美味しそうに焼き上がってますね」
「熱いうちに食べちゃってください…あっ…」
「え?どうしました?」
「プロデューサーさん、ちょっと失礼しますね〜」
「???」
あずさはプロデューサーの方の皿に入っているそれを一口分すくった。
「ふー…ふー…ふー…ふー…はい、プロデューサーさん。アーン」
「えっ、あ、あずささん!?」
「もう、プロデューサーさん。ノリが悪いです…」
少しふくれっ面になるあずさ。
「ゴメンなさいあずささん、もう一回お願いします」
「はいプロデューサーさん、アーン」
「アーン…パクっ…こ、これは…何か懐かしい感じがする味です」
「そうかしら〜?特別な物は何も入れていないはずよ〜」
「うちの母が作ってくれていたのとレシピが似ているのかもしれませんね」
「なるほど、そうかもしれないわね〜」
「これならいくらでも入っちゃいますよ」
「プロデューサーさん、メッです。ゆっくり味わって食べてください」
「そうですね、せっかくの手料理ですから」
その食事中…
「そういえばこの部屋の薫りってジャスミンですよね?」
「はい、プロデューサーさんは嫌いだったでしょうか〜?」
「いえ、好きですけど…どこから来てるのかなって思ってたんです」
「隣の部屋からです。ほら、あのお香からなんです〜」
「あー、あれですか」
短くなっているお香からは未だに煙がたなびいていた。
「プロデューサーさんが来るからって、点けちゃいました」
「そんなお気遣いしてくれなくても良かったんですよ」
「プロデューサーさんは…大切な人ですから」
「…あずささん…」
プロデューサーはその気遣いに少し恥ずかしそうに照れていた…
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あとがき
さて半年ぶりの「100のお題」、16本目もアイマスから。
煙がほとんど関係無い話になっているのはいつものことです。
あずささん自身は別の煙でも特に何も問題無い年齢ですが、そんなのは書きません。
あずささんだからこそできる少し大人な雰囲気の気遣いって物ですね。
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2011・04・10SUN
飛神宮子