#049〜龍の牙〜

立春も過ぎ、徐々に冬が終わっていくそんなある日のこと…
ピンポーン
悟郎の家にとある来客が…
「はーい、誰だろ?集金関係は今日は来ないはずだし…」
カチャッ
そこには青い服を着た悟郎が見覚えのある一人の青年が立っていた。
「聖者殿、お久し振りでございます」
「え?ゴ、ゴウ…ど、どうしたんだい?修行に行っているはずじゃ」
そう、修行のたびに出ていたはずのゴウがそこに居たのだ。
「聖者殿…と言うよりユキに一つお願いがあって来たのだが」
「え…?無理な願いじゃなきゃ聞くけど、いったい何だい?」
「ユキを今日一日お借りしたいのだが、駄目だろうか?」
「ユキさんを?僕は別に構わないけどさ、ユキさん次第だね」
と、ちょうどそこに…
「ご主人さま申し訳ありません出ていただい…ゴ、ゴウさん!?」
「ユ、ユキ!」
少しずつ頬が紅く染まっていく二人。
「と、突然どうされたんですか?ゴウさん」
「いや、ちょっとここにお願いがあって来たんだが…」
「あ、ちょうどよかったユキさん。ゴウがちょっとお願いがあるんだってさ」
「せ、聖者殿…ああ、ユキにひとつお願いがあって来たのだ」
「私にですか?何でしょう?」
「今日一日だけで良いのだが、俺に付き合ってくれないか?」
「えっ…わ、私がですか?え、えっと…」
珍しくしどろもどろになるユキ、その顔はすっかり真っ赤になっていた。
「だ、駄目か?ユキが駄目なら別に良いのだが…」
「わ、私なんかでいいのでしょうか?ゴウさんの相手が私だなんて」
「いや、ユキでなくては駄目なんだ。ユキにだけ関係することなんだ」
「ご主人さま、どうしましょうか。行ってよろしいでしょうか?」
「いいよ、ランもツバサも今日は居るしさ。たまにはユキさんもゆっくりしてくるといいよ」
「あ、ありがとうございます…それならば行きましょうゴウさん」
「本当か?ならば…もう一つ聖者殿にお願いがあるのだが、よろしいだろうか?」
「ん?何だい?ゴウ」
「あの…そのだ。服を貸してはくれぬか?この格好のままだと街を歩きづらいのだ」
「それくらいなら構わないよ、あんまり良い服は無いけどさ」
「良いのか?洋服であれば俺は何でも構わない」
「ユキさんもその格好じゃなくて普通の服にしたら?」
「それもそうですわね、私も奥の部屋で変身してまいります」
「あ、そうだ。ユキさん、ゴウのための服を出してあげてくれない?」
「はい、分かりましたご主人さま。それでは中へどうぞゴウさん」
「あ、ああ。それではお邪魔する、聖者殿」
………
「この格好は変ではないか?ユキ」
「大丈夫ですよ、ゴウさん。私こそどうですか?」
「あ、ああ。何と言うか普段の姿と違って可愛らしいぞ」
「そ、そんな…は、早く行きましょう」
「あ、二人とも行く準備はできた?」
「はい、ご主人さま。えっと、何でしょうか?」
「一応渡しておくから、これでゆっくりしてきてよ」
「あ、ありがとう聖者殿。こんなに頂くとは申し訳ない」
「いや、いいんだよ。今日は特別だからさ」
「それじゃあ行きましょ、ゴウさん」
「そうだな、それじゃあ一日ユキをお借りするな」
「うん、行ってらっしゃいゴウ、ユキさん」
 
「とりあえず、どこに行かれるんでしょうか?ゴウさん」
「いや、どこに行くというわけでもないのだが…ちょっとユキに会う必要があっただけなんだ」
「私にですか?それならばどうしましょうか…」
「お、俺はユキと二人だけになれる場所ならどこでもいいのだが」
「それならばスーパーで食べるものを買って、丘の方へ行きましょう」
「ああ、そうだな。そうしよう」
二人はそのままスーパーへと向かっていった。
………
「ふう、食べた食べたな。こうしてユキと食べるから美味しく感じたな」
「ゴ、ゴウさん…。お…お粗末さまでした」
「でも少し食べ過ぎたかもしれないな、いつもの俺らしくないな」
「それはそうですわ、あんなにいっぱい食べるんですもの」
「お茶はまだ残ってないか?ちょっと苦しいのだが」
「私のならば、まだ残ってますわ。はい、どうぞ」
「ゴクッングッ…はあっ…ありがとうユキ」
「どういたしまして、そんなに苦しいならばどうぞ私のここを枕に横になってください」
「い、いいのか?それならそうさせてもらおうか」
ぽふっ
ユキの腿へと頭を乗せるゴウ。
「それで、私に渡したい物って何だったのですか?」
「あ、そうだったな。確かここに…」
ススススススス
ポケットを探るゴウ、そして出てきたものは…
「これだ、これをユキに渡しておこうかと思ってな」
「これは…何でしょう?」
それは青色に光る少し尖った堅くて小さい物であった。
「俺の犬歯だ、これを持っていてくれ」
「え…犬歯と言うことはこれはもしかして…」
「ああ、龍の牙だ。聖者殿が困ったらこれを使ってくれ、遠くに居ても聖者殿の力になるからな」
「分かりました、これは大切に持っています」
「頼んだぞ、ユキ」
そのまま二人は夕方になるまで一緒の時間を過ごしていたという…
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あとがき
「100のお題」、3本目は久々の天使のしっぽです。
天使のしっぽで書くのは、クロスオーバーで書いたので約2年ぶりです。
と言うより、四聖獣を書くのは初めてですね。いやー難しかった。
しかしながら授業中は筆が進むこと進むこと(苦笑)
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2006・05・19FRI
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