#031〜ベンディングマシーン〜

「兄ちゃーん、ジュースー」
「あ、真美も真美もー」
「ちょっとは我慢してくれよ、二人とも。この渋滞を見れば分かるだろ?」
事務所への帰り道、プロデューサーと二人を乗せた車は渋滞に巻き込まれていた。
「でもー、兄ちゃん何とかしてよー!」
「無理なのは分かるだろ?俺だって早く何か飲みたいよ」
「兄ちゃんあれって何ー?」
「え?あ、道の駅…か。でも、この渋滞にもう一度合流するとなると大変だよな…」
「あーもう、チョーひまひまだよー」
「亜美も、これじゃあヒマヒマ星人になっちゃうよ」
「そんなこと言ったってなあ…ちょっと待ってくれ、ラジオで情報確認するから」
1620kHzにチューニングするプロデューサー
『午後3時40分現在の国道○×号の道路情報です。□□交差点での事故の調べのため片側交互通行となっていましたが、先ほどその規制は解除となりました』
「よし、それなら…」
『影響で□□交差点より5kmの渋滞となっています』
「亜美、真美、あの道の駅に寄るぞ」
「え、いいの?」
「ああ、この渋滞はしばらくすれば解消するはずだ。普段は混まない道だからな、それまで休もう」
「「やったーっ!」」
と、プロデューサーの車は駐車場へと入っていった。
 
「亜美、真美、何飲む?」
「亜美はコレにするー」
「あー真美もそれにしたかったのにー」
「ほら、喧嘩するなって。別にお金が無いわけじゃないんだから」
チャリンチャリンチャリンチャリンチャリンっ
「まずは亜美からでいい?」
「いいよー」
ピッ ガコンっ
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピ…
「お、これ当たりつきの自動販売機か…って…」
ピピピピピピッ パンパカパーン!!
「兄ちゃーんっ!当たったよーっ!」
「本当だ、珍しいこともあるもんだな」
「じゃあ、次は真美でいい?」
「ああ、いいぞ」
ピッ ガコンっ
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピ…
「…まさか、嫌な予感が…」
ピピピピピピッ パンパカパーン!!
「まさか、偶然…偶然だよな」
「兄ちゃん、次は兄ちゃんの番だよー」
「あ、ああ分かってるって」
ピッ ガコンっ
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピ…
「ねえ、兄ちゃん。果てしなく嫌な予感がするけど…」
ピピピピピピッ パンパカパーン!!
「どうしよう…亜美、欲しい物ある?」
「いいの?兄ちゃん」
「しょうがないだろ、もうこうなったら外れるまでだ!」
………
そして車の中…
「これ、どうするのー?」
「しょうがないから事務所で分けるしかないだろ」
車内には軍資金120円で当選し続けた30本近くの飲み物が積まれていた。
「兄ちゃん、飲んでもいい?」
「いいぞ。でもあんまり飲むなよ、トイレとか言われても困るから」
「「はーい」」
「しかし、周りの人も驚いてたなー」
「だよねー、中の人が居るんじゃないかって思ったもん」
「うんうん、んぐっ…あ、でも兄ちゃーん」
「ん?何だ?」
「真美たち良かったの?双子だったってことバレちゃったよ」
「…あ、そ…あ、いいんだ」
「えー?どうしてー?」
「亜美には言ってなかったか、収録で待機してた真美にだけ話してたからな」
「むーずるいずるいずるいずるいー!亜美だけ仲間外れなんてー!」
「いやいや、真美に話したのも今日帰る前だったからな」
「そーだよ、亜美。真美、聞いたときびっくりしたもん」
「兄ちゃん勿体ぶらないで早く教えてよー」
「あのな今度、亜美と真美の双子ユニットとして売り出すことにしたから」
「それって兄ちゃん、どういうこと?」
「社長にはもう許可を貰ったし、お前たちの親にも許可を貰ってる」
「もういつでも二人で出れるってことなの?」
「そうだ。今度は代わりは居ないってことになるからしっかりやってくれよ」
「「うんっ!」」
「えっと、来週の土曜日に記者会見やるから心の準備をしておくように」
「「はーい」」
「よろしい、だから今週はレッスン漬けだからな」
「えー。でも亜美、頑張ろっか」
「そうだね、真美。もう一人じゃないから頑張らないとかな」
「よーしっ、これから亜美と真美でアイドル界の天下を取るぞー!」
「おーっ!」
「(…今の二人ならもう大丈夫だな、うん。)」
「兄ちゃーん、ところで新曲とか出すの?」
「ああ亜美、もう一応詩も曲も貰ってるから、レッスンはそれを含めてやることになってる」
「どんな曲?どんな曲?」
「真美落ち着いてくれ。えっと曲名が………で、タイアップCMももう△△で決定してる」
「本当?△△ってことは何かもらえるかなー?」
「たぶんな、そこの社長が亜美真美のことをお気に入りでな」
「え?真美たちが双子だったの知ってたの?」
「いや、そうじゃないけど…ちょっと今回の件を話したら『うちで是非』って乗り気になってな」
「あれ?ってことはCM撮影もあるの?」
「ああ。もう夏休みだし、来週の火・水とやるから。趣旨とかは事務所に戻ったら説明する」
「「はーい」」
「あと、二人それぞれのソロ曲もカップリングとして収録するから」
「んっふっふー、何だか忙しくなったね亜美」
「うん、でもいーじゃん。だけど…兄ちゃんありがと」
「え?」
「亜美、思ってたんだ。真美が出てるのに、亜美って名前で出てるのがちょっと心苦しかったから」
「亜美…そんなこと無いって。真美だって、せっかく亜美の名前が出てるのに真美が出るのは変な気持ちだったもん」
「俺も実はな、二人が思ってたことと全く同じことを思ってた。だから社長に思い切ってこのことを言ってみたんだよ」
「兄ちゃん…本当にありがと。これからも亜美をよろしくね」
「本当にありがと…兄ちゃん。真美をこれからはよろしくね」
「ああ、二人のことはこれからも任せてくれ。何があっても二人は守るからな」
「兄ちゃん…亜美ね、兄ちゃんのこと…」 「兄ちゃん…真美ね、兄ちゃんのこと…」
「「だーい好きだよ」」
「……ありがとう、二人とも。…よし、着いたからとりあえず戦利品を事務所に持ってってくれ」
「あれ?兄ちゃんは?」
「俺は二人の荷物とか他の荷物を持ってくから」
「んー、じゃ行こっか真美」
「そーだね、亜美」
チュッ チュッ
二人はプロデューサーの飲む予定だった缶にそっと口付けをして、それを袋にそっと仕舞った…
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あとがき
「100のお題」、9本目もアイマスから。
テーマ(自動販売機)からどんどんと外れていくのがよく分かります。
何気に亜美真美は初めて書きましたが…書き分けができないので難しかったです。
最後の展開は、何気に自分でも予想外でした。成り行きで書くとよくこうなります。
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2008・06・07SAT
飛神宮子
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